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一方学生会室の外からでも、和希の怒鳴り声が聞こえていた。
「まったく遠藤の奴は諦めが悪いな。」
「ヒデ…その言い方は無いだろう。」
「なんだ丹羽、啓太なんか静かじゃないか。」
「そうだけどよ。やっぱり抵抗あるんじゃないか、女物の浴衣なんて。」
「お前だって楽しみにしてたんじゃないのか?」
「そりゃ、最初ヒデから聞いたときは見たいと思ったさ。でもよ、あんなに嫌がるなら俺はその…見なくても我慢できる。」
「ふぅ…相変わらず甘いな哲ちゃん。」
「甘いって、俺はただ…遠藤が嫌がる事はさせたくないんだ。あいつにはいつも笑って貰いたいからさ。」
「ふん、まあお前がそれで良いなら好きにしろ。だが無理はするな。身体に悪い。」
「ヒデ…お前俺の事心配して言ってくれてるのか?」
「さぁな、どちらでも好きな方へ取れ。」
「分かった。サンキュー、ヒデ。」
その時学生会室のドアが開き、手芸部の部員達が出てきた。
「お待たせしました。丹羽会長、中嶋副会長、バッチリの仕上がりです。」
「おう、悪かったな。」
「手間を取らせたな。」
「いいえ、それではこれで失礼します。」
手芸部員が去ると丹羽と中嶋は学生会室へ入る。
中では啓太が一生懸命和希をなだめていた。
「和希大丈夫だから。本当に変じゃないよ。」
「嫌だ!」
「だからおかしくないって。」
「おかしいよ、こんな格好。」
「かつらかぶって化粧もしてるんだから、誰も和希だって気付かないよ。」
「気付かなくたってヤダ!!」
「もう…いい加減諦めなよ和希。この格好になったんだから、それよりも開き直って楽しもうよ。」
「俺は啓太と違って開き直れないんだよ。とにかく無理な物は絶対無理。俺この姿ではここから一歩も出ない。」
やれやれと言う顔をして中嶋が声を掛ける。
「啓太。」
中嶋の声を聞き、啓太は嬉しそうに中嶋の側まで走っていく。
「中嶋さん、どうです?俺似合いますか?」
「ああ、良く似合っている。可愛いぞ。」
「ありがとうございます、中嶋さん。」
嬉しくてたまらない笑顔で啓太は中嶋を見つめる。そんな啓太を中嶋は優しい眼差しで見つめ、そこだけ別世界になる。
「それで啓太、遠藤は何を拗ねてる?」
「聞いて下さいよ、中嶋さん。和希ってばすごく似合ってるのに似合ってないって言い張ってそこから動かないんです。本当に頑固なんだから。中嶋さんからも何か言ってあげて下さい。俺がいくら言っても聞いてくれないんです。」
「いや、それは俺の役目じゃない。」
そう言うと入り口近くにいる丹羽に
「丹羽、そろそろ出かける時間だ。遠藤を何とかしろ。」
丹羽は何か決心したように和希の側に行き、その後ろ姿にそっと語りかける。
「遠藤…」
和希の肩がピクッと反応する。
「そんなに嫌だったらもうそれ脱いで制服に着替えろよ。それで一緒に花火大会に行こう。」
「王様…?」
和希は振り返らずに答える。
「お前仕事忙しいのに今夜の為に時間作ってくれたんだろう。授業も殆ど出ないで、毎晩夜遅くまで仕事頑張ってさ。折角なんだから一緒に行こうぜ。お前一人制服だと気を使うから俺も制服に着替えるからさ。さぁ行こう。」
「王様…」
「でも一度でもいいからその姿俺に見せてくれないか?着替えるのそれからでも良いだろう?それとも、それもダメか?」
「王様…」
そう言うと和希は丹羽の方に振り向く。その姿を見て丹羽は思わずため息を付いた
「綺麗だ…」
「え?」
「いや…遠藤お前すげぇー綺麗だな。驚いたぜ。」
「…本当ですか?」
「ああ、感動したぜ。」
「…嬉しいですか?」
「もちろんだ!最高だぜ!!さぁ着替えて花火大会へ行こうぜ。時間がなくなっちまうからな。」
「…いいですよ。」
「え?」
「このままでいいです。」
「遠藤?」
「このままで花火大会に行きますよ。ったく、王様貴方のそんな顔見たら着替えたいなんて言えなくなっちゃうじゃないですか。本当に貴方の笑顔は強力なんですから。」
「遠藤…」
「ほら、王様行きますよ。啓太と中嶋さん待ちくたびれてますよ。」


翌日…ベルリバティスクールではその話題で持ち切りだった。
「なぁ、お前見たか?」
「昨日の花火大会での王様と中嶋さんだろう。」
「見た見た。王様、凄い美人連れていたよな。」
「中嶋さんだって、凄く可愛い子連れてたよ。」
「いいよな。」
「本当羨ましい。」




夏です。夏なんです。…という訳で花火大会です。今あちらこちらで花火大会がやってますね。
管理人の所も先日花火大会が催されました。とても綺麗ました。
でも、花火よりも和希は綺麗だと思ってます。

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