For You 3

そのドアの前で、和希は躊躇してしまった。
今日は8月15日…王様こと丹羽哲也の18歳の誕生日。
和希の恋人の誕生日である。
先日、王様に欲しいプレゼントはないかと尋ねてみれば、返ってきた答えは「お前が欲しい!!!」
王様が言うお前とは俺の事。
一ヶ月程前、王様に求められたが怖くなって途中で逃げ出した事があった。
王様の事はもちろん大好きだ。
こんなに人を好きになった事など今までなかった。
だから、王様から求められればいつでも応えようと思っていた。
でも…あの時、いきなり求められてどうしたらいいのか解らなくなった。
“王様が好き”という気持ちより、“怖い”という気持ちの方が勝ってしまった。
その結果は、王様を突き飛ばしてそこから逃げるという事だった。
そんな俺に王様は“いつまででも待っている”と言ってくれた。
王様は本当に優しい。
俺の事をいつも一番に考えてくれる。
自分の思いよりも俺の気持ちを大事にしてくれる。
そんな王様に俺はいつも甘えてしまっている。
いけないと思っていても、そこからなかなか抜けられない自分がいる。
でも、今日は違う。
王様が好きだから、誕生日プレゼントに王様が一番望む物をあげたい。
それはきっと俺が望む物と同じだから…
和希は一呼吸する。
うん。大丈夫。今日はちゃんと王様を受け入れられる。
右手を伸ばして、愛しい人が待つ部屋のドアを叩く。
“コンコン”

消灯後の丹羽の部屋。
窓辺に寄りかかる様に立っていた丹羽は、ノックの音と共に部屋に入って来た和希に気付くと、不安そうな顔をいつもの笑顔に変えて和希を迎え入れてくれた。
いつもの様に王様の側へ和希は歩いていく。
「来てくれるかどうか不安だったぜ。」
「えっ?どうしてですか?だって俺今日は遅くなっても王様の部屋へ行くって言いませんでしたか?」
「言ったさ。でも…」
「でも?何ですか?」
「自信がなかった。俺はお前に無理なお願いをしただろう?」
「無理なお願い?それって何ですか?」
「……お前が欲しいって……」
ああ…この人は…和希は思った。
ーだから好きになったんだ。
 こんなにも自分の気持ちよりも俺の事を考えてくれる。
 そんな優しさでいつも俺を包み込んでくれる人。
 だから俺も思った。
 俺も王様を守りたいと。
 俺が王様を世界で一番幸せにしてあげたいと。
 そう思ったんだ。ー
和希は丹羽の側に近づくと、手を丹羽の首に回し、丹羽の唇に自分の唇を重ね、耳元でそっと呟いた。
「王様、お誕生日おめでとうございます。プレゼント受け取って貰えますか?」
少し震える声で、でも丹羽の目を真っ直ぐに見つめながら和希は言う。
愛おしいくて、何度も夢の中で抱いた和希が今、丹羽の前で自分にすべてを預けると言ってくれている。
丹羽は和希にそっと触れる。
微かに震えているのが解る。
でも、今の丹羽には、もう自分を押さえる事などできなかった。
和希をギュッと抱き締めると、
「本当にいいのか?この間みたいに途中で嫌だと言っても、もう離さないぜ。」
「言いませんよ、そんな事。安心して下さい。でも…」
「でも?何だ?」
和希は少し間をおいて言った。
「返品は無しにして下さいね…」
丹羽は嬉しそうに笑うと、
「ばかやろう、そんな事誰がするか。頼まれたって返品なんてしねえよ。」
そう言うと、食い入る様なキスをする。
ビクッと震える和希の身体を優しく包み込む。
そして和希の身体をその腕に抱き上げ、ベットまで運ぶとそっと降ろす。
「…王様…」
「本当にいいんだな、遠藤。」
和希の柔らかい髪に指を絡ませながら、丹羽は言う。
そんな丹羽に和希は、ふわりと微笑むと
「はい、王様。俺は王様の事が誰よりも大切だから…王様、幸せにして下さいね…」
丹羽は啄む様なキスを一つおとす。
「和希…愛してる…俺の一生をかけて愛してやるから、覚悟しろよ。」




王様お誕生日おめでとうございます 

和希、王様、おめでとうございます。
この後の話は管理人の能力の無さで書けませんでした。
ごめんなさい。
でもきっと、甘い夜を過ごしていると思います。
と言うか、王様和希の事寝かせないと思いますよ。
そうとう我慢してましたからね。
とりあえずお幸せに…

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