Mistake 1

注意
この小説の中に成瀬さんが出てきます。
成瀬さんは和希に片思いという設定でので、その点を踏まえて構わないと言う方のみ観覧下さい。
無理な方は急いでここから退出して下さいます様、お願い致します。














“バタン”
勢い良く自分の部屋のドアを閉め、丹羽はその拳で壁を叩く。
「くそ〜いつからからなんだ?いつから成瀬のヤローと遠藤はできていやがったんだ。」
苦しそうに丹羽は呟いた。
事の起こりは数分前。
たまたま食堂の前を通り掛かった丹羽の耳に厨房の方から和希の声が聞こえてきた。
「遠藤の奴、こんな所で何してるんだ。」
ちょっとした好奇心から厨房に行った丹羽。
それがとんでもない物を見る羽目になるとは知らずに…
「いいですよ、成瀬さん。何がお望みですか?」
「それじゃ、遠慮なく。」
成瀬の手が和希の顎を掴み重なる唇。
一瞬自分が今何を見ているのか丹羽は分からなかった。
ざわめく気持ちを抑えつつ、丹羽はその場から黙って去っていった。
もう一度拳で壁を叩いた。
「俺の前では何でもない顔しやがって…俺の気持ちを弄んでいたのかよ、遠藤。」
辛くそして力無く呟いた。


一方その頃厨房では…
“ドン”と成瀬を突き飛ばす和希。唇を手で擦りながら
「な…何をするんですか?成瀬さん。」
「何って、遠藤にキスしただけだけど?それがどうかしたの?」
シラッと答える成瀬。
「キ…キスしただけって…どうしてそうなるんですか?」
「だって遠藤今、お礼をしてくれるって言ったじゃないか?」
「ええ、確かに言いましたよ。お弁当作りを教えて貰いましたからね。そのお礼が欲しいって成瀬さんが言うから、何がいいか聞きましたよ。だからってどうして俺が貴方からキスをされなくちゃいけないんですか?」
「お礼がキスだからさ。」
「何でそうなるんですか?」
「だって遠藤が可愛かったんだもの。俺の所に来て“成瀬さん、お願いがあるんです。俺にお弁当の作り方を教えて下さい。”って頭を下げて言うんだもの。」
「うっ…それは…俺だって本を見ながら一人で頑張ってみたんです。でも、上手く切れないし、焦げるし、とても食べられるものは作れなかったんです。」
成瀬は笑いながら聞いていた。
「だけどどうしても、王様にお弁当を作ってあげたかったんです。夏休みに毎日一生懸命学生会の仕事をしている王様に俺、何かしてあげたかったんです。」
「ふ〜ん、それでお弁当を差し入れしようと思ったんだ。」
「そうです。いけませんか?」
「いや、遠藤って健気なんだなぁと思っただけだよ。」
「…」
「分かったって。そんなに睨まないでよ。深い意味があってキスした訳じゃないんだからさ。」
「深い意味があったら困ります。」
「はいはい、ごめんね遠藤。」
「別にもう良いですよ。相手が成瀬さんだって忘れていた俺がバカでした。」
「遠藤それってどういう意味?」
「初対面の啓太に平気でキスをするような人でしょう、貴方は。」
「古い話をむしかえすな。」
「そうですか?俺にとってはつい最近の話なんですけどね。まぁ、もう良いです。さっきのキスの事、俺忘れますから。」
「え?忘れるの?」
「当たり前です。」
ボソッと成瀬は言う。
「え?何か言いましたか?成瀬さん。」
「いや、別に。それよりも折角作ったんだろう。早く会長に届けてあげたらどう?」
「はい!ありがとうございました、成瀬さん。」
破顔で答えると、和希は大事そうにお弁当を持つと厨房を出て行った。
その後ろ姿を見ながら成瀬はため息をついた。
「まったく会長しか見えていないんだね、キミは。僕の気持ちにはまったく気付いていないんだから。きっとさっきのキスの意味も分かってないんだろうな。」


“コンコン”
学生会室のドアをノックして和希は中に入る。
「あれ?今日は王様一人ですか?」
「いや、ヒデと啓太は今会計室へ行っている。すぐ戻るはずだ。」
不機嫌そうに答える丹羽に和希は変だなと思いつつも歩みを止めずに丹羽の側に行く。
「そうですか。それよりも王様俺…」
照れくさそうに話す和希に丹羽は怒鳴った。
「それ以上近づくんじゃねぇよ!」
「お…王様?」
驚く和希を無視して丹羽は話続ける。
「お前、楽しいか?」
「え?何の事ですか?」
「俺を騙して楽しいかって聞いてるんだよ!」
「何言ってるんですか?王様、俺がいつ王様の事騙してるって言うんですか?」
「成瀬と二人して俺の事笑い物にしてたんだろう!」
「成瀬さんと?何言ってるんですか?どうしてそこに成瀬さん出てくるんですか?」
「まだしらを切る気か、遠藤!さっき寮の厨房でキスしてただろう!!」
和希の動きが止まる。
「ど…どうしてそれ…知ってるんですか?」
動揺する和希の姿が、さらに丹羽を追いつめた。
「やっぱりな。お前と成瀬できてるんだろう?だからこの間俺に抱かれるのが嫌で逃げ出したんだろう?」
「違います、王様。」
「もういいよ。無理するなって。もう行けよ、成瀬の所へ。」
「王様、俺の話聞いて下さい。」
「いいって言ってるんだよ!さっさと成瀬の所へ行けって言って…痛!」
和希は持っていた弁当を丹羽に投げつけた。
「バカ!!どうして俺の話聞いてくれないんですか?俺の事信じてくれないんですか?もう王様なんて知りません!」
和希はそう叫んで学生会室を出ようとドアを開けた所で、戻って来た啓太と中嶋に会った。





王様のお誕生日まであと7日

珍しく誤解したままで和希の言い分を聞かない王様。
そんな王様にぶちぎれた和希。
今回は珍しくまだ和希は泣いていません。
って…王様の誕生日記念の一日目の小説がこれですか?
可哀相な王様…

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