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プレゼントの中身はなあに?1

欲しい物なんてあるのだろうか?
欲しい物があったとしてもきっと自分で手に入れるだろう。
だって、貴方は1人で黙って努力して欲しい物を手に入れる事をする人だから。
そんな貴方に惚れたのだけど、今回はかなり困っている。
付き合って初めて迎える貴方の誕生日。
何を渡したら喜ぶのだろう?
プレゼントを渡した時の貴方の笑顔が見たいから、悩んでしまう。
貴方に何をあげたら喜んでくれますか?


「和希様、何か悩み事でもございますか?」
「石塚?」
「失礼かと存じましたが、この数日ずっと眉間に皺を寄せて考え込んでいるようなので。」
「うっ…眉間に皺が寄っている?」
「はい。私で構わなければ、話を伺いますがいかがでしょうか?」
心配そうな顔をして 和希を見つめる石塚。
そんな石塚を見て和希は苦笑いをする。
この優秀な秘書に隠し事は無理だと分かっている。
まして、プライベートに関しては思っている事が顔に出てしまっているらしい。
自分では普段と同じように振舞っているつもりなのに…
「和希様?」
「あ…」
「申し訳ございません。秘書として差し出がましい真似をしてしまいました。今の言葉はお忘れになって下さい。」
頭を下げた石塚はそのまま理事長室を出ようとしていた。
そんな石塚に和希は慌てて声を掛ける。
「石塚、待ってくれ。」
「和希様?」
「悪い。少し考え事をしていたんだ。そうだな。この問題は私1人で解決するには少し重たい問題なんだ。石塚の知恵を拝借したい。お願いできるだろうか?」
「はい。私で構わなければ喜んで。」
「ありがとう、石塚。」
和希は嬉しそうに笑った。

「それで、和希様は何を悩んでおいででしょうか?」
「…うん…それが…」
和希はすぐには言い出さなかったが、石塚は和希が喋り出すまで待っていた。
暫くすると、
「実はもうじき中嶋さんの誕生日なんだ。」
「中嶋君のお誕生日ですか?確か19日でしたね。」
「よく知っているな。」
「和希様の大切な方ですから。」
微笑んで答える石塚を見て、やはり敵わないなぁと和希は密かに思った。
「それで、何をお悩みなのですか?」
「誕生日プレゼントなんだ。普段よく使う物とか趣味の物がいいのかとも考えたんだけれども、何かこうしっくりこなくて…何を贈ればいいのか迷っているんだ。」
そう言う和希の顔はもう理事長の顔ではなかった。
そんな和希を愛しく思いながら石塚は和希にアドバイスをする。
「そうですね。私ならどんな物でも嬉しいですよ。」
「どんな物でも?」
「はい。愛しい人から贈られた物は例えどんな物でも宝物のように思えます。」
「そうか…」
「和希様は編み物がお得意ですから、何か編まれてはいかがですか?」
「編み物か。」
「恋人からの手作りの物程嬉しい贈り物はありません。きっと中嶋君も喜ばれると思います。」
「そうだな。何か編んでみよう。」
和希はホッとした顔をした。
「石塚、ありがとう。」
「いいえ、どういたしまして。理事長の仕事もあってお忙しいとは思いますが、頑張って下さいね。」
今から編んで間に合う物はなんだろうかと和希は中嶋へのプレゼントを考え始めていた。

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