Origin 1
この話は今まで書いてきた中和話とは違う設定の話になっています。
ですので、啓太のお相手も七条さんではなく、篠宮さんになっています。
ご理解の上お読みになって下さい。
和希は最近悩んでいた。
中嶋に告白されて付き合うようになって2ヶ月。
中嶋は優しく和希に接してくれるが、それだけなのだ。
キスはしてくれる。
触れるだけの軽いキスだけれども。
でも、あの中嶋がキスしかしないというのはおかしいと和希は思い悩んでいた。
あれだけ性に関してだらしがない中嶋が未だに和希に手を出さないというのはどう考えてもおかしすぎる。
自分に魅力が無くて中嶋が手を出さないのかとも考えた。
だが、中嶋ならそんな相手を恋人にするのだろうか?
それとも、他でそっちの方は用が済んでいるので単に和希に手を出さないだけなのか…
いくら考えても答えが出るわけでもなく、堂々巡りをしている和希だった。
「和希、最近元気ないよね。何か悩みがあるの?」
「啓太…」
心配そうに和希の顔を覗きこむ啓太に和希はできるだけ明るく振舞おうとしたが、失敗に終わった。
「和希、駄目だよ。そんな風に誤魔化しても。その悩み、俺には話せない事?なら仕方ないけど、そんな風に落ち込まないでね。」
心底和希を心配している啓太に申し訳なくて和希は思い切って悩みを打ち明けようと思った。
「啓太…今から話す事は内緒だぞ。」
「えっ?」
「約束できるか?」
「うん…何か凄く真剣な話みたいだね。」
「みたいじゃなくて、真剣なんだよ。」
「で。何かあったの?」
和希は一息ついてから話始めた。
「実はさ…中嶋さんの事なんだ…」
「中嶋さんの事?」
「ああ…」
「中嶋さんがどうかしたの?和希、けんかでもしたの?」
「違うよ。実はさぁ、俺中嶋さんと付き合ってもう2ヶ月経つだろう。なのにまだ何もないんだ。」
「何もないって何が?」
不思議そうな顔をする啓太に、
「啓太…お前まさかわざとそう言っているのか?」
「えっ?違うよ。」
「だよなぁ…啓太に限ってそんな事ないもんな。」
深くため息を付く和希を見て啓太は不安になる。
和希の言いたい事をすぐに理解できない自分が情けなかった。
「ごめん和希。何が何でもないんだ?」
「あのな…」
和希は啓太に近づくと小声で言った。
「実は俺、まだ中嶋さんとキスしかした事がないんだ…」
「えぇぇぇ〜!!!」
いきなり大声を出した啓太の口を和希は手で押さえる。
「啓太…声が大きい…」
啓太は慌てて和希に謝ると、
「ごめん、和希。でも、それって…俺をからかっているわけじゃないよな。」
「当たり前だろう。」
ふう〜と啓太はため息を付くと、和希の顔をじっと見た。
確かに真剣な悩みだと啓太は思った。
付き合って2ヶ月も経つのにあの中嶋さんが和希に手を出さないなんて、信じられない。
中嶋さんなら付き合ったその日に和希としていたと啓太は思っていた。
でも、言われてみれば和希はいつも元気だった。
啓太だって篠宮と付き合っているのだから、シタ翌日はどういう状態になるかは解っているつもりだ。
特にあの中嶋さんが相手なら、和希が元気にしている筈がない。
何で中嶋さんは和希に手を出さないのだろうか?
啓太は一生懸命に考える。
けれども、いくら考えても答えはでなかった。
啓太は済まなそうに和希に言った。
「ごめん、和希。俺、解らない…」
「いや、謝らなくてもいいよ、啓太。付き合っている俺にすら検討がつかないんだ。啓太ならなおさらだ。」
「う…ん。でも、折角和希が相談してくれたのに俺、何の役にもたたなかった。」
済まなそうに言う啓太に和希は笑って答える。
「大丈夫だって。俺、今の話を聞いてもらえただけで、少し気分が晴れたよ。1人で抱え込んでいるのは辛いもんな。聞いてくれてありがとう。」
「そう言ってくれると嬉しいよ。あっ、そうだ!和希。王様に相談してみたら?」
「王様に?」
「うん!だって王様は中嶋さんの親友だもの。きっと何か解るかもしれないよ。」
「そうだな。1人で悩んでいても仕方ないもんな。後で王様に聞いてみるよ。」
何かの糸口になればいいな…と思ってホッとしていた和希だった。
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