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MVP戦が啓太の勝利で終わり、1年の遠藤和希が実はここベルリバティスクールの理事長だとわかり、季節は5月の下旬を迎えようとしていた。
いつもと変わりのない日々が戻り…いや、MVP戦の後中嶋と啓太が恋人として付き合うようになり、ここ学生会室の様子は少し変わった。
中嶋の手伝いをする啓太に付き合って和希が学生会室へちょこちょこ顔を出すようになった。もっとも、和希は部活や理事長としての仕事があるので啓太ほど来るわけではなかったが。
「一発殴らせろっ!!」
と怒鳴った丹羽は和希とはよそよそしい感じではあった。



「どうしたんですか?王様」
学生会室の窓から外をぼんやり見ていた丹羽は突然声をかけられ手に持っていたコーヒーカップを落としそうになった。
「どわー!遠藤、急に声をかけるな」
「え?ちゃんとノックもしましたし、声もかけましたけど…それより啓太と中嶋さんはいないんですか?」
「ああ、図書館へ資料を取りに行ってる。もうじき帰ってくると思うが。」
「そうですか。良かった。」
「何が良かったんだ?それよりも何持ってるんだ、遠藤。」
丹羽は和希が大事そうにかかえている箱を指さした。
「これですか?ケーキですよ。今日取引先の人が持ってきてくれたんですが何でも有名店のケーキで凄く美味しいって女子社員が言ってたので、啓太に食べてもらおうと思って持ってきたんですよ。」
にっこりとほほえみながら和希は言う。
また啓太か…と丹羽は思った。啓太の転入当時からいつも啓他のそばにいた遠藤。
MVP戦の後啓太がヒデと付き合うようになってさぞ落ち込んでいるだろうと思ってたら、以前よりも温かな目で啓太を見るようになった遠藤。
相変わらず遠藤の一日は啓太で始まって啓太で終わるのか…
丹羽は和希に気づかないようにそっとため息をついた。
そのとき学生会室のドアが開き啓太と中嶋が書類を持って入ってきた。
啓他はすぐに和希に気づくと
「あれ?和希来てたのか。」
「ああ、少し時間ができたからな。それよりも啓太、ケーキ食べないか?」
和希は持ってきた箱を啓太に差し出す。啓太は嬉しそうに
「ケーキ!?」
「取引先からもらったんだ。有名店のケーキらしいからきっと美味しいぞ。」
「ほんと?あ、俺ここの店知ってるよ。すごく美味しいって前に七条さんが言ってたんだ。」
「そうか。七条さんのお薦めなら間違いないな。王様も中嶋さんもご一緒にいかがですか?」
「お、そうか。せっかくだから食おうかな。」
「俺はやめとく。」
そう言えば中嶋さんは甘いものが苦手だったよな、と和希は思った。
「え〜せっかくだから一緒に食べませんか?」
「甘いものはいらん」
「せめて一口でもいいから一緒に食べて下さいよ。」
ムキになって中嶋に詰め寄る啓太。恋人の中嶋と同じものを食べたい気持ちでいっぱいである。
『こういう所は可愛いんだよな、啓太って。でも今回は無理だろうな。中嶋さんは甘いもの嫌いだからな』
和希がそう思ったとき、
「仕方のない奴だな。ただし一口だけだぞ。」
「わぁーありがとうございます!中嶋さん!」
破顔で答える啓太。その啓太を優しく見つめる中嶋。
「ったく。ヒデの奴変わったな。」
和希の隣にいた丹羽がぼそっと言う。和希はクスッと笑いながら
「いいじゃないんですか。だって啓太と中嶋さん、幸せそうじゃないですか。」
「そりゃそうだけどさ…お前それでいいのか?」
「何がですか?」
「啓太のことだよ。お前好きなんだろ、啓太のこと。」
「好きですよ、確かに。でも恋愛感情じゃありませんから。」
「そうなのか?」
「そうですよ。俺は啓太の親友ですから。」
「ふぅん…」
何故が嬉しい気分に丹羽はなった。
「和希!コーヒー煎れるから手伝って。」
「分かった啓太。」
啓太の方に向かう和希を見ながら、不思議と浮かれた気分になった丹羽でした。




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