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二時間目の後の休み時間、中庭で和希と啓太は出会った。
「アレ?啓太今からか?」
「う…うん。」
「ふぅん。重役出勤だな。」
「え、そうかな。」
「中嶋さんと仲が良いのはいいけど、ほどほどにしとけよ啓太。」
「か…和希…」
顔を真っ赤にしてアタフタしている啓太が可愛らしくて和希は微笑んでしまう。
「何笑ってるんだよ。だいたい和希のせいなんだぞ!俺が遅刻したのは!」
「え!俺のせい?」
和希は考え始めた。最近学生会室で仕事をミスした覚えもないし、中嶋さんのご機嫌を損ねる程啓太と一緒にいた覚えもない。
「俺何かしたか?」
「え…いや…その…」
啓太は、しまったと思った。
昨夜啓太の部屋での話
「ねぇ中嶋さん、和希と王様何とかしてあげられませんか?」
「丹羽と遠藤か。あの二人がどうした?」
「中嶋さんだって気付いてますよね。和希も王様もお互いの事意識しているのによそよそしいし。」
「確かにな。」
「和希ってば結構意地っ張りで素直じゃないから見ていてじれったいんです。」
「丹羽もこういう事に関しては鈍いからな。」
「だから、俺達でなんとかしてあげたいんです。」
「それは今しなくてはならない話か?」
「だ…だって和希は俺の親友だし、王様も中嶋さんにとって大切な友人ですよね。」
「ほぉ。それで。」
「だから、中嶋さんも心配してるんじゃないかと思ったんです。」
「俺は丹羽の恋愛事など、どうでも良いが…そうだな。啓太がそこまで言うなら考えなくもない。」
「本当ですか?」
「ああ。但しこれからのお前の態度しだいだがな。」
「え?」
「せっかくの俺との時間に丹羽と遠藤はいらないだろう?本当に仕方がない子だな……やはりお前にはお仕置きが必要だな。」
「な…中嶋さ…ん…」
「啓太?」
「え?ごめんね和希。別になんでもないよ。」
「そうか?なら良いけど。そろそろ三時間目が始まるぞ。」
「和希は?もしかして今から仕事?」
「ああ、今日はもう授業には出られないと思うんだ。そうだ、これ今日の1・2時間目の授業のノートだから、後で見とけよ。」
「ありがとう和希。」
「どういたしまして。」
二人は、別々の方向に歩いていった。
教室の窓からその様子をじっっと見ていた丹羽に中嶋が声をかけた。
「何熱心に見ているんだ、哲ちゃん。」
「な…急に人の背後に立つなよ、ヒデ。」
中嶋は視線を窓の外に移すと、ニヤッと笑い
「ほぉ、遠藤を見ていたのか。」
「何言ってやがる。天気が良いから外を見ていたら、あいつらが勝手にやってきたんだ。」
「照れるな。」
「照れてなんていねーよ。第一外には啓太もいるのに、なんで遠藤だけをと言うんだ。」
「俺は“遠藤を”と言ったんだ。“遠藤だけ”とは言ってないが。」
「良い性格してるな。ヒデ。」
「最高の褒め言葉だな。有り難く頂戴するぞ。」
「ったく…」
丹羽はもう誰もいない外を見る。
「あいつ、いつまで学生やってるつもりなんだ?」
「遠藤か?さあな…気になるなら直接本人に聞いたらどうだ。」
「いや、そこまでして知りたい訳じゃない。」
「フッ…素直じゃないな、哲ちゃん。そんなにあいつの事が気になるのか?」
「そういう訳じゃねえよ。この頃啓太と一緒に学生会室に来るだろう。それがなくなったらなんかこう淋しくなるような気がするんだ。」
「そこまで気にしていて、お前自分の気持ちに気づかないのか?」
「あー自分の気持ち?そりゃどういう意味だ、ヒデ。」
「自分でよく考える事だな。俺はもう席に戻る。」
中嶋が自分の席の方へ戻るのを見ながら丹羽は考えた。
「俺の気持ち…?何なんだよ、それ…」
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