Strawberries Candy1

この話は『GIFT』に載っている彩湖さまの書かれた「イチゴキャンデー」を読んで書いた話です。
お時間がおありでしたら、「イチゴキャンデー」をお読みになってからこの小説をお読みになって下さい。


きっかけは啓太の部屋で見たテレビのCMだった。
最近クラスで人気のドラマを和希は見た事がなく、皆の話についていけない和希を啓太が気にしてそのドラマを録画したのだった。
そのドラマは確かに面白かった。
人気があるのもうなずけたのだが、和希はそのドラマよりもさっき流れたCMの方が気になってしまっていた。
それは合格祈願のパッケージのお菓子のCMだった。
普段テレビを見ないし、コンビニ、スーパーにも滅多に行かない和希にとってその合格祈願菓子は魅力的だった。
王様にあげたら、きっと喜んでくれるに違いない…
和希はそう思い、仕事の調整しようと決めたのだった。

数日間無理をして仕事をしたおかげで、休みが取れた。
この時期にしては珍しい事だった。
その日は平日だったけれども授業は午前中のみなので、和希はお昼を食べた後バスで街に出た。
遠藤和希としての外出は初めてではないが、1人での外出は初めてだった。
ドキドキしながらも、以前啓太と行ったスーパーにむかう。
お目当ての合格祈願菓子の前に立った和希は呆然としてしまった。
なぜなら色んなメーカーから出ていたからだ。
スナック菓子、チョコレート、飴、お煎餅、ラムネ、そしてドリンク(ペットボトル)まである。
一体どのお菓子が1番効果があるのだろう?
和希はその場で考え込んでしまった。
だが、いくら考えても答えが出なかった。

「どうしよう…」
散々悩んだ末に、和希は合格祈願と書いてある全てのお菓子をかごの中に入れた。
「うん。これだけあれば大丈夫だよな。」
和希はこのお菓子を見た時の丹羽の姿を想像して、嬉しそうに微笑むとレジに向かおうとしてふと足が止まった。
そこにあったのは苺味のお菓子。
苺が大好きな啓太のお土産にはぴったりだ。
それに啓太はお菓子が大好きだ。
啓太の部屋にはいつ行っても何種類かのお菓子の袋が置いてある。
「啓太に買っていってやろう。」
そう言ってそのお菓子を手に取ろうとした和希はまたその場に立ちすくむ事になる。
側の棚には他にも苺味のお菓子があった。
しかも、季節限定品だった。
苺のお菓子の量は合格祈願のお菓子よりもずっと数が多かった。

和希はまた悩む事になった。
だが、今度の判断は早かった。
棚にある全ての苺味のお菓子をかごに入れたのだった。
当然かごが1つで足りるわけもなく、かごは全部で2つ使いしかも山盛りになった。
コレを運ぶのは大変かな?と思っていた和希に声がかかる。
「お客様、かごを運ぶのをお手伝いします。」
「えっ?」
和希が振り向くと、そこにはここのスーパーの制服を着た若い女の子が立っていた。
「でも…量があるので。」
「大丈夫です。これも私達の仕事ですので。」
「そうですか?ではお願いします。」
和希はニッコリと笑うとその店員は顔を赤らめた。

「あの…お客様。他のお買い物はございますか?」
「いえ、これだけです。」
「かしこまりました。それではお客様はレジにどうぞ。」
和希は言われた通りレジで会計をした。
その間にその店員はお菓子をスーパーの袋に詰めてしまっていた。
「お客様、袋の数が多いですが大丈夫ですか?」
「はい。もう帰るだけですから大丈夫です。色々とお手数をお掛けしました。」
「いいえ。それではお気を付けてお帰りになって下さい。」
「色々とありがとうございました。」
和希が微笑んで言うと、店員は真っ赤な顔をして「どういたしまして」と言ってその場からいなくなった。
「この間啓太と来た時と随分扱いが違うんだな?」
店員の姿が見えなくなると和希は首を傾げながらそう呟いた。
お菓子売り場でお菓子の棚を悩みながら見ていた和希の姿にお店の女性店員達が見とれていた事を和希は知らなかった。




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