最初に
この話を読まれる前に下記の点にご注意下さい。
この話のCPは中和・七啓・王西です。
苦手なCPがある方はお読みにならない事をお勧めします。
読まれた後の苦情は差し控えてもらいたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「なぁ、ヒデ。バレンタインと誕生日ってどっちが大事だと思う?」
「…」
中嶋は何も言わずにジロッと睨むが丹羽は気にせずに続きを話出した。
「俺としては誕生日はすげえ大事な日だと思うんだ。けどよう…愛を伝えるバレンタインも重要だと思うんだ。でも、どちらか選ばなきゃならないなら、どっちがいいかなぁって思ってよう。なぁヒデ。お前ならどっちを選ぶ?」
中嶋の顔が引きつっていくのが分かる。
学生会の引継ぎも無事に終わったのだが、丹羽がやり残した書類が山の様に残っているので丹羽と中嶋は毎日のように会議室で書類の製作をしていた。
もちろん、受験生の為に長時間はできないがそれでも僅かな時間を見つけては2人で仕事をこなしていた。
そんな中嶋と丹羽を放っておけずに、和希と啓太も時間がある時は手伝いをしていた。
会議室の空気が一気に冷えていくのを感じた啓太は隣に座る和希の腕をつつきながら小声で言った。
「和希、何とかしてよ。」
「俺が?出来るわけないだろ。」
「どうしてだよ。中嶋さんは和希の恋人だろう。」
「こ…恋人って…」
瞬時に顔を赤らめた和希を見て、啓太は可愛いなぁと思ってしまう。
和希と中嶋が恋人として付き合い始めてから半年以上経つ。
秘密主義の中嶋には珍しく和希との付き合いを隠そうとはしなかった。
周りには気が回る和希だが、自分の事になると疎い所があるので、自分がいかにモテるか理解していない。
それが中嶋には気になって仕方がないのだ。
「和希、顔赤いけど大丈夫?」
「あ…大丈夫。啓太が急に変な事言うから少し動揺しただけだから。」
「動揺って…動揺するような事は言ってないだろう?」
真面目な顔で啓太が言えば、顔を赤くさせたまま困ったように和希は視線を泳がせた。
「それよりも、この状態を何とかしないと不味いよな。」
「うん。王様、中嶋さんの機嫌の悪さに気付いてないだろう?」
「あの様子からは気付いているようには見えないな。」
和希と啓太はお互いにため息を付く。
「なぁ、啓太。王様が悩んでいるのって、西園寺さんの事だろう?」
「そう思うよ。だって誕生日とバレンタインって言ったら2月14日の事に間違いないからね。」
「王様なりにどちらを優先するか悩んでいるんだろうけど、相談する相手を間違っていると思うんだよな。」
一生懸命中嶋に聞こうとしている王様を見た後、和希は中嶋を見た。
今にも切れそうな中嶋を見て和希は再びため息を付きながら立ち上がると中嶋と丹羽の側に行き丹羽に声を掛けた。
「お話中、失礼します。」
「何だ?遠藤。」
「先程頼まれたこの書類なんですが…」
和希が話出すと中嶋は自分の席に戻って仕事を始めた。
それに気が付いた丹羽は慌てて中嶋に声を掛ける。
「おい、ヒデ。」
「王様。」
和希はにっこりと笑うと小声で囁いた。
「西園寺さんのお誕生日プレゼントとバレンタインのチョコレート、俺でよければ相談にのりますよ。」
「本当か、遠藤?」
「しー」
和希は人差し指を口に当てながら、
「静かにして下さい。」
中嶋が睨んでいるのに気が付いた丹羽は申し訳なさそうに頭を掻いた。
「今日のノルマを片付けたら相談にのりますから、今は仕事をして下さい。」
そう言って微笑んだ和希の顔はとても綺麗で、丹羽はドキッとしてしまった。
顔を少しだけ赤らめた丹羽は、
「ありがとうな、遠藤。」
「どういたしまして。お役にたてれば嬉しいです。ただし、中嶋さんには内緒にして下さいよ。」
「もちろんだぜ。」
これで今日の仕事は大丈夫だなと安心しながら席に戻っていった和希は不機嫌そうな中嶋の顔には気が付かないでいたのでした。