Worry Be Worried 2

嫌な予感は当たる物で、H.R.の後さっさと逃げ出そうとしていた丹羽は中嶋に声を掛けられた。
「丹羽、今すぐ学生会室に来い。」
「ヒデ…」
有無を言わせない態度で二人して教室を出ようとした時
「丹羽、ここで逃げ出したらどうなるか分かっているな。」
振り返らずに言う絶対零度の声。
お前は俺の行動が見えるのか…と丹羽は思った。
仕方がない。中嶋の言いたい事は分かっているので、渋々と中嶋の後を歩き学生会室に入った。
中に入るなり丹羽に冷たい視線を送ると
「丹羽、お前遠藤に何をした?」
やっぱりその話か…丹羽はそう思ったが、わざと知らないフリをした。
「何の事だ、ヒデ。」
「しらばっくれるな。啓太にさんざん泣きつかれたんだぞ。」
中嶋は携帯電話を開くと、メールの着信歴を丹羽に見せる。
ズラッと並ぶ啓太からのメールの数。
「ふぅ、お前のおかげで、5時間目は授業にならなかったぞ。」
ため息を付きながら中嶋は言う。
これだけ啓太からメールが来ているなら、俺に聞く必要などないだろうに…と丹羽は思った。
「悪かったって。でもよぅヒデ、これだけ啓太からメールが来てれば、わざわざ俺に聞かなくても話は分かってるんだろう。」
「片方の話だけですべてが分かる訳がない事ぐらいお前にだって分かるだろう?俺はもう片方の話が知りたいんだ。」
丹羽は頭をガシガシかくと、ボソッとしゃべり出した。
「多分啓太の話どうりだよ。嫌がる遠藤に無理矢理やろうとして逃げられたって話だ。」
「お前らしくもないな。何があった?」
「別に何もないさ。」
「そんな訳ないだろう。あんなにいつも遠藤に気を使っているお前が。」
いつも気を使ってる…ヒデの目に俺はいつもそう映っているのか。
何も答えられない丹羽に、ククッと中嶋は笑う。
「やはり今朝のはお前にとって刺激が強すぎたか?」
「ああ?今朝のって…あっ!ヒデ貴様、俺があそこにいたのに気付いてわざと啓太にキスをしたのか?」
「さぁ何の事だか俺にはさっぱり分からないがな。」
「てめぇ、おかげで俺がどんな目にあったか分かってるのか。」
「自業自得だろう。なんでも人のせいにするな、哲ちゃん。」
「この野郎!!」
丹羽が中嶋を殴りかかろうとしたその時、学生会室のドアがノックされ啓太と和希が入って来た。
「中嶋さん?」
「王様?」
二人の声に一瞬丹羽の動きが止まったが、すぐに動き出し勢いよく中嶋を殴ったつもりが、そこには丹羽に頬を殴られ倒れ込んでいた和希の姿があった。
「和希!」
啓太は急いで和希の側に寄ると、キッと丹羽をにらみつけ
「和希になんて事するんですか!王様。」
「い…いや、俺は遠藤を殴るつもりなんてなかったんだ。ヒデの奴を殴ろうとして。」
「どっちだって同じです!どうして人に暴力を振るうんですか?」
「それは…」
「もういい、止めてくれ啓太。」
「和希…」
身体を起こしながら和希は啓太に向かって笑顔で言う。
「俺がすべて悪いんだから。だからもう王様の事これ以上責めないで欲しいんだ。」
「だって…」
「本当に良いんだって。啓太悪かったな。俺のせいでお前5時間目ずっと中嶋さんにメール打ってただろう。」
「和希知ってたのか?」
「当たり前だろう。ずっと下向いて右手動かしていれば、誰だって気付くさ。俺の事心配して中嶋さんに相談してくれてたんだろう。俺ってダメだな。啓太にこんなに心配かけて、カズ兄失格だな。」
「何言ってるんだよ、和希。そんな事ないに決まってるじゃないか。誰にだって悩み事の一つや二つぐらいあるよ。それに俺は嬉しかったんだ。和希が俺に頼ってくれて。こんな俺でも和希の役に立って、すごく嬉しかったんだからな。」
「啓太…ありがとう。」
二人の世界に入っていく和希と啓太を見て中嶋はため息を付く。
「良かったな、哲ちゃん。とりあえず啓太の機嫌はどうにかなったからな。」
「ああ…」
バツ悪そうに丹羽は答えながら和希の顔を見る。
さっき丹羽に殴られた所がかなり赤く腫れている。
これは数日は、腫れはひかないな。跡も残りそうだ。仕事大丈夫だろうか。
あの顔で会議に出るのか…お偉方さん、どんな目で遠藤の事見るんだろうな。
丹羽は落ち込んでいた。
そんな丹羽には目もくれずに和希は今度は中嶋に声を掛ける。
「中嶋さん、貴方にもご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」
「まったくだ。お前らがどうなろうが俺には関係ないが、毎回啓太を巻き込むな。良い迷惑だ。」
「うっ…すみません。」
「遠藤お前ももういい歳の大人なんだろう。そんなにイヤだったら丹羽のあそこでも蹴って逃げれば良いだろう。」
「えっ…それは…できません…」
「なに甘い事を言ってるんだ。そんな事だから丹羽が調子に乗るんだろう。遠藤、自分の男ぐらい自分で管理しろ!」
「ヒデ、もうそれぐらいにしてやってくれないか?」
和希の前に丹羽が立つ。
「王様?」
「悪いのは俺なんだ。遠藤は何も悪くないんだ。だから、その辺で勘弁してやってくれ、頼む。」
中嶋に頭を下げる丹羽を見て和希は慌てて丹羽の前に行き
「止めて下さい、王様。悪いのは俺なんですから。」
「遠藤…」
「頭を上げて下さい、王様。ごめんなさい。俺がいけないんです。俺なんて王様の恋人でいる資格なんてないですよね。」
「な…何言い出すんだ、突然に。」
「だってそうじゃないですか?王様の事受け入れる事ができない俺なんて王様だって辛いだけでしょ。」
「そんな事ねぇよ。」
「無理しなくたっていいですから。俺も啓太みたいに素直だったら良かったのに…今日までありがとうございました。」
頭を下げ学生会室から出で行こうとする和希を後ろから丹羽は抱きしめる。
「馬鹿野郎!!人の話もろくに聞こうともしないで何処に行くきだ。」
「だって…」
「俺がいつお前の事イヤだなんて言ったんだ?お前といると辛いだなんて言った?俺はお前だからいいんだ!」
「…」
「俺は今のお前が、遠藤和希が好きなんだ!!」
「…いいんですか?」
「何がだ?」
「俺…まだ王様の事受け入れる勇気…ありませんよ。」
「馬鹿だな、まだそんな事気にしているのか?別にお前の身体だけが目当てじゃないぞ。俺が一番欲しいのはお前の心だ。」
そう言うと丹羽は和希を自分の方へ向けると濡れた頬をそっと拭う。
腫れた頬に触れた時は、さすがに痛いらしく身体をビクッとさせた。
「悪い、痛かったか?」
「えっ…少し」
不安そうな顔をして和希は丹羽を見つめる。
「もう少し…もう少しだけ待ってもらえますか?そうしたら俺…」
続きを言おうとした和希の唇を丹羽は自分の唇でふさぐ。
「気にするな。俺はいつまででも待つ…でもあんまり長くは待てないかもな。」
困った顔をする丹羽を見て、和希はクスッと笑う。
「ありがとうございます、王様。」
今度は和希からのキス。
丹羽は和希を優しく抱きしめ、二人の甘い時間は流れていく。


そんな二人の様子をいつの間にか学生会室から出て行った啓太と中嶋は、少し開けたドアの隙間から見ていた。
「あー良かった。中嶋さん良かったですね。和希と王様仲直りできて。」
「ふん。だから言っただろう。あの二人の事はほおっておけと。バカップルなんだからほっといたって自然とうまくいくのだから。こちらが気にするだけ時間の無駄だ。」
「確かにそうかもしれないけど、心配じゃないですか。」
「まったく。まぁそこがお前の良い所だがな。啓太、行くぞ。」
「え?中嶋さん仕事は?」
「今日は無理だろう。それよりまだ時間はある。久しぶりに外へでも行くか?」
「良いんですか?中嶋さん。」
「ああ、いつも頑張って学生会の仕事を手伝ってくれている礼だ。お前のすきな所へ連れて行ってやるぞ。」
「わー!本当ですか?何処に行こうかな。」
中嶋と一緒に啓太は楽しそうに歩いて行った。




中嶋氏と啓太のお陰で無事王様と和希、仲直りできて良かったです。
いつかきっと和希と結ばれる日が来ますから、もう少し待ってて下さいね王様。
あれ?ラスト中啓で終わっちゃいました。ここ一応王和なんだけどなぁ…

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