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和希のお誕生日まで後4日

『……また明日、この場所で……会って、くれますか』(七条×和希)

「お疲れ様です。」
そう言いながら、七条は理事長室に入ってきた。
「七条さん、どうやってこの部屋に入ってきたのですか?まさかとは思いますが、勝手に入ってきたのですか?」
「失礼ですね。秘書の石塚さんが鍵を開けてくれましたよ。」
「石塚が?」
「はい。和希に会いたいと電話をしたらどうぞ、と言って中に入れてくれました。」
にこやかに微笑みながら言う七条に和希はため息を付く。
いったい、どんな風に言って石塚にドアを開けさせたのだろう?
石塚は七条について何も言わないけれども、内心困っているのではないだろうかと気になってしまう。
そんな和希の気持ちを七条は察し、
「僕と石塚さんは仲良しなんですよ。和希はご存知ありませんか?」
「仲良し、ですか?それは初耳です。」
「そうですか。石塚さんは奥ゆかしい方ですから、自らは仰らないのですね。それでは覚えておいて下さいね。僕と石塚さんが仲良しだと言う事を。」
「…」
ここは『はい』というべきなのかどうか計りかねた和希は黙っていた。
「ところで、ここに来たって事は何か用があるんでしょう?」
「ええ。」
そう言うと七条は椅子に座っている和希の側に行くと手を差し伸べた。
「僕と一緒に来てくれますか?」
「えっ?今、仕事中なんですけど…」
困った顔をした和希にニッコリと七条は微笑む。
「大丈夫です。1時間程休憩時間を頂きました。」
「休憩時間?」
「はい。あまり根を詰めると身体によくないばかりか、効率が落ちます。気分転換をしましょう。」
そう言いながら七条は和希の手を取るのでした。

「七条さん、屋上に行くんですか?」
向かう先がサーバー棟の屋上だと気が付いた和希が声を掛けた。
「そうです。今日は暖かいですから屋上でティータイムがいいかなと思ったので。」
屋上の扉を開きながら七条はそう言った。
開いた扉から屋上を見た和希は驚きの声を上げる。
「七条さん、これはいったい…」
「ですから、ここでティータイムをすると言ったでしょう。」
そう言うと七条は和希の手を引いて椅子に座らせた。
何もないはずの屋上にはテーブルと椅子が用意されていた。
テーブルにはレースをふんだんに使ったクロスが使われていて、その上には一口サイズのケーキやスコーン、クッキーにチョコレートなどお菓子が綺麗なお皿の上にたくさん並んでいた。
そして、テーブルの側にはカートがあり、ティーポットとカップが置かれていた。
「今日はダージリン・ファーストフラッシュを用意しました。」
ポットから紅茶をカップに注ぐと和希の前に置いた。
「綺麗な黄金色で華やかな香りですね。」
「春の1番茶ですから。どうぞ温かいうちに飲んで下さい。」
和希はカップにソッと口をつける。
柔らかな香りは優しい春を連想させる。
「美味しい。」
和希の笑顔と共に紡がれる言葉。
その言葉に七条は満足する。
「気に入ってもらえて何よりです。お菓子も食べて下さいね。今日は食べやすいように一口サイズのものを用意したんですよ。」
「はい。どれにしようかな…どれも美味しそうだし…」
子供のように目をキラキラさせながら迷っている和希。
「これにします。」
和希が選んだのは桜のスコーン。
「春らしいものをチョイスなさるんですね。」
「だってほんのりとピンク色で可愛かったから。」
和希の答えに七条はクスッと笑うと、
「それではクロテッドクリームをどうぞ。」
スコーンがのっているお皿にクロテッドクリームをのせた。
「ありがとうございます。」

楽しい時間はアッという間に過ぎてしまう。
和希の携帯が時間の終わりを告げる為に振動していた。
「もう、1時間経ってしまったんですね。」
名残惜しそうに和希は呟いた。
「ここは僕が片付けておきます。和希はもう理事長室に戻って下さい。」
「でも、1人だと大変でしょう?」
「大丈夫です。準備したのも僕1人でしたから後片付けも平気です。」
そう言って和希を理事長室に向かわせようとしている七条に、
「天気予報では、明日も晴天でしたよね。」
「そうですが、それが何か?」
「なら、椅子とテーブルはこのままにしといて下さい。」
「和希?」
不思議そうな顔をする七条に和希は顔を赤らめながら、
「俺、明日も仕事なんです。だから……また明日、この場所で……会って、くれますか?」
和希の言葉に七条は最初驚いた顔をしていたが、すぐに微笑みながら、
「わかりました。明日もここで一緒にティータイムをしましょう。今日と違う茶葉とお菓子を用意して待っています。」
「はい。よろしくお願いします。」
和希はふわりと微笑むと急ぎ足で七条の側に来て、風のように唇に触れた後急いで屋上を後にした。
後に1人残った七条は和希が触れた唇に手を添えながら呟いた。
「参りましたね。まさかこんな可愛い真似をされるとは思いませんでした。これ以上、和希に夢中にさせてどうするつもりですか?」

梅雨の合間の晴天の出来事を書いてみました。
七条さん=甘いもの(お菓子)&紅茶
と言うイメージがあるので、今回は和希くんと2人きりで屋上でティータイムを過ごしてもらいましたvv
大好きな恋人と過ごす一時。
仕事で疲れた和希の心と身体は休まったと思います。
          2011年6月5日

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