Another Addition 3
啓太を守る為なら何を犠牲にしても構わない
そう思って開催した学園MVP戦
でもそれは、同時に俺の本心を気付かせるものでもあったんだ
だた見ているだけで満足だなんて綺麗事だと
学園MVP戦は俺に教えてくれた
「和希、今日の放課後学生会室に一緒に行く?」
「う〜ん、そうだな…」
「あっ、もしかして部活?」
「いや、一緒に行くよ。」
「本当?良かった。」
俺1人だと緊張しちゃうんだよね、と笑いながら言う啓太を和希は少し複雑な思いで見ていた。
啓太と中嶋はMVP戦を順調に勝ち進んでいた。
2回戦にも勝ち残って、後は3回戦を残すのみになっていた。
3回戦は啓太の得意な運だから大丈夫だと思うけれども、まだ安心するのは早いかな?と思いながらも既に安心している和希だった。
それよりも気になるのは、啓太と中嶋の仲だった。
ペアを組んで以来、プライベートでも一緒にいる事が多くなった2人。
嬉しそうに中嶋に話し掛ける啓太に優しい眼差しで答える中嶋。
解っていた結果なのに、和希はそんな2人を見て、胸が苦しくなる自分の気持ちを持て余していた。
“コンコン”
学生会室の部屋をノックして、啓太と和希は中に入った。
「こんにちは。伊藤と遠藤です。お手伝いに来ました。」
元気いっぱいに声を掛ける啓太に中嶋は手を止めて振り向く。
「今日も悪いな、啓太、遠藤。」
「いいえ。それよりも今日はまず何をすればいいですか?」
「そうだな…この書類をコピーして貰おうか?」
「はい!」
嬉しそうな笑顔で答える啓太に書類を渡すと、頭をポンッと叩き、
「頼んだぞ。」
そう中嶋は言う。
そんな微笑ましい2人を見ていると、胸がチクッと痛んだ和希は意識を他に向けようと周りを見渡し、不在な会長席を見て言った。
「中嶋さん、王様はまた逃げ出したんですか?」
「いつもの事だ。ああ、そうだ遠藤、悪いが丹羽を探して連れてきてくれないか?」
「はい、解りました。」
パソコンから目を離さずに言う中嶋に、和希は返事をして学生会室のドアのノブに手を掛けようとした時、奥から啓太がヒョイと顔を出し、
「気を付けてな、和希。行ってらっしゃい。」
「うん、行ってきます。」
そう啓太に声を掛けると、和希は学生会室を出て、ため息を付きながら呟いた。
「啓太だけには、手を止めて顔を見るんだよな…」
解っている事なのに、何故か悲しくなってしまう。
中嶋の細かい動きを一々気にする自分が疎ましく感じる和希だった。
啓太に声を掛ける時だけ手を止めパソコンから顔を上げて、啓太の顔をみながら喋る中嶋。
和希には…いや丹羽でも他の誰でも同じだ。
中嶋はけしてパソコンから目を離さず、画面を見ながら話す。
そう…啓太だけが特別…
そんな現実を受け入れるのが辛くて、和希は首を振って丹羽を探し始める。
中嶋さんと啓太を親しくさせる為に学園MVP戦を開いた訳ではなかった
だた…結果としてそうなっただけ
啓太が笑っていてくれればそれだけで良かったはずなのに
胸に広がる不安と痛みと…それからこの気持ちは何?
自分で自分の気持ちが解らなくなる
俺は本当はどうしたいんだろう?
俺は本当は何を望んでいるんだろう?
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