Another Addition 4

いつか解る時が来るなら
今伝えようと思った
俺の正体が理事長と知った時
貴方はどんな顔をしますか?中嶋さん…



学園MVP戦の優勝報告の為理事長室に来た啓太と中嶋に和希は理事長姿で対面した。
「優勝おめでとう、中嶋君、伊藤君。」
「遠藤…」
「かっっっ和希?」
ニコッと笑って言う和希に、眉間にしわを寄せる中嶋、そして焦ってどもる啓太。
「今まで黙っててごめん。実は俺がこの学園の理事長なんだ。」
それから、あの夏の日の約束、情報漏洩の為学生になった事など話した。
その間、中嶋は黙って聞いていた。
一方啓太は開いた口が塞がらなかったが、徐々に内容を理解したようだった。
「くれぐれもこの事は内密に。」
そう言って和希は二人との会談を終わらせた。
二人が理事長室から出て行くと、和希は椅子に座りため息を付いた。
「終わったな…」
学園MVP戦も終わり、啓太は無事に学園に残れる様になった。
そして…和希は啓太と中嶋の関係に気付いてしまった。
先程の出来事を思い出し、和希は寂しげに微笑んでいた。
理事長室を出る時、中嶋は啓太を先に出した後、和希に向かってこう言った。
「これからは啓太は俺が守る。お前はもう啓太の心配をする必要はない!」
「解りました。その代わり…啓太を泣かせたら承知しませんよ。」
「ああ。解ってる。」
それだけ言うと中嶋は出て行った。



そうしてどれくらい時間が経ったのだろうか?
様子を見に来た秘書に心配されつつも仕事を始め、気付けば門限の時間はとうに過ぎていた。
そっと寮に入り、自分の部屋に向かった和希は部屋の前にいる人影にビクッとする。
人影は和希に気付くと声を掛けてきた。
「随分と遅いんだな、遠藤。」
「王様?王様ですか、そこにいるのは。」
「ああ。」
「どうしたんですか?こんな時間に?」
「お前に話があるんだよ。」
「俺に?とにかくもう遅いんでこんな所で話していては迷惑になるので、部屋に入って下さい。話は中で伺いますから。」
鍵を開け先に部屋に入った和希を押し、丹羽は扉を閉めると壁に和希を押しつけた。
「な…何するんですか?」
「うるせー!!」
いきなり怒鳴る丹羽に和希は怪訝そうにする。
疲れているのにどうしてこんな扱いを受けるのか腹立たしかった。
「何なんですか?いきなり怒鳴ったりして。」
「遠藤、てめえがここの理事長なんだってな。」
「えっ?」
一瞬焦るが直ぐに冷静になり、
「そうですよ。中嶋さんから聞いたんですか?」
「ああ、そうだよ。てめえ、良くも今まで黙っていやがったな。」
「一生徒である君言う必要はないと思うがね。」
和希の口調が理事長になる。
「なんだと!!」
「そうだろう?たかが学生会会長だからと言って特別扱いされるとでも思ってたのかい。」
「お前…一発殴らせろ!!」
「どうぞご自由に。ああ、一発とは言わずに二発でも構いませんよ。」
「なっ…」
「本来なら、学内での暴力沙汰は問題なんですが、今回は特別に不問にしてあげますよ。」
「お前…自分で何言ってるんだか、解ってるのか?」
自暴自棄に言う和希に丹羽は問いただす。
和希はニコッと笑うと、
「解ってますよ。それで丹羽君の気が済むなら、君の好きにすればいい。」
丹羽は手をギュッと握ると、
「殴る気が失せたよ。今夜は帰る!」
そう言って丹羽は和希の部屋から出て行った。
一人残った和希はジャケットを脱いで椅子に掛けると、ベットに倒れ込んだ。
「疲れた…でも何だったんだ?今の王様。まあ、いいか。そんな事どうでもいいや。」
疲れていた身体に冷たい布団は気持ちがよく、そのまま和希は眠りについた。



好きなのに
こんなに貴方を想ってたのに
届かなかった想い
「これからは俺がお前を守る」
その言葉が欲しかった
でもその言葉は
俺ではなく啓太に向けられた言葉だった




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