Another Addition6

啓太は何も悪くない
ただ親友の俺に話をしているだけ
それを素直に聞けないのは俺の心の狭さ
自分で自分が嫌になる瞬間
自分がこんなに心の狭い奴とは思わなかった
日々積もっていく自分への苛立ちはどこにいくのだろうか


あの日、とうとう言ってしまった一言。
啓太は笑って許してくれたけれども、自分で自分が許せなかった。
その上、丹羽からの告白。
疲れ切った心と身体はオーバーヒート寸前だった。
「和希、大丈夫?保健室に行こうよ。」
突然顔を覗き込んだ啓太に、和希はビックリして言った。
「け…啓太…?今、授業中じゃないか?」
「ふう〜、和希、もうとっくに授業は終わってるよ。本当に大丈夫?」
呆れ顔半分、心配顔半分で啓太は言う。
啓太の話を聞いて和希が周りを見渡すと、確かにもう授業は終わっていて、お昼をどこで食べようかと相談している友人の声が聞こえる。
「本当だ…もう授業終わったんだな…」
「そうだよ。それよりも和希、顔色悪いからお昼ご飯食べる前に保健室へ行こうよ。」
「えっ…大丈夫だよ。」
「もう駄目だよ、和希。和希はすぐに無理するんだから。倒れてからじゃ、遅いんだよ。」
「だって啓太、中嶋さんとお昼食べるんだろう?遅れちゃまずいだろう。」
「平気だよ。さっき和希を保健室に連れて行ってから食堂に行くって中嶋さんにメールを打っといたから。」
ニコッと笑っていう啓太に完敗した和希は諦めてため息を1つ付くと、
「解った、行くよ。」
そこまで言った時、本来ならここ1年生の教室にはいない人物の声が教室中に響き渡った。
「遠藤!迎えに来たぞ!」
「王様?」
驚いて声を上げたのは啓太で、和希はもの凄く嫌な顔をした。
「王様?どうしてここに?」
ツカツカと教室に入り、二人の前に立つと丹羽は啓太の質問に答えた。
「啓太、さっきヒデにメールを送っただろう?それを見たヒデから遠藤が具合が悪いって聞いたから来たんだよ。啓太、俺が遠藤を保健室に連れて行くから、お前はもう食堂に行っていいぜ。」
「えっ…でも…」
「構わねえよ。俺が責任を持って遠藤を保健室に連れて行くから、安心して言って来い。」
啓太はちょっと考えてから、遠慮気味に和希に尋ねた。
「和希、それでいい?」
「えっ…いや…王様の手を煩わす程の事はないから、俺1人で保健室に行くよ。」
「遠藤、遠慮なんていらないぜ。」
「遠慮なんてしていません。それ程酷くないから1人で行けるって言ってるんです。」
「和希、なら俺が付いて行くよ。」
「いいよ、啓太。俺1人で行けるから。第一食堂で中嶋さんが啓太の事待ってるんだろう?待たせちゃ悪いから早く行って来いよ。」
「でも…」
「いいから…なっ…何するんですか、王様?」
無言で和希の側に歩いて来た丹羽は、いきなり自分の肩に和希を担いだ。
「うだうだ言ってねえで遠藤は俺と一緒に保健室に行けばいいんだよ。啓太、お前はさっさと食堂へ行け。遅れるとヒデの機嫌が悪くなるぞ。」
丹羽の肩に担がれている和希を教室に残っているクラスメートは呆然と見ている。
啓太は申し訳なさそうに、
「王様、和希の事お願いします。和希、お大事にね。」
「おう!任せとけ!!」
「け…啓太…」
縋る様な和希の視線を感じながら、啓太は手を振って食堂へと走って行く。
丹羽も和希を担いだまま保健室に向かうが、廊下ですれ違う生徒達は丹羽と和希を見て唖然とする。
皆の視線に耐えられない和希は、小声で丹羽に抗議する。
「王様、下ろして下さい!」
「いや、駄目だ。」
「何が駄目なんですか?恥ずかしいですからもう下ろして下さい!」
「病人が何言ってるんだ?」
「まだ病人とは決まってません!」
「そんな顔色してよく言うぜ。それよりも遠藤、お前ちゃんと飯食ってるのか?めちゃくちゃ軽いじゃねえか。」
「そんな事、王様には関係がない事でしょう。」
「あ〜、関係あるだろう。俺は遠藤に惚れてるんだからさ。」
「貴方もしつこい方ですね。俺断りましたよね。」
「ああ、だけど、今はだろう?」
「今だけじゃなく、未来もありませんけどね。」
「大丈夫だ。きっともうすぐ俺に惚れるからさ。」
「まったく…どこからくるんですか?その自信は。」
「俺は王様だからな。」
「それって、使い方間違ってますよ?」
「そうか?ほら着いたぞ。松岡先生、病人を連れてきたぜ!」
丹羽は保健室のドアをガラッと開けた。


疲れ切ってしまった身体と心
今は何も考えられない 考えたくない
大切な人を傷つけたくない
祝福してあげる心の余裕が欲しい
だから…
今はそっとしといておいて欲しい
1人でゆっくりと考える時間が欲しい






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