Another Addition 7

あの日からいつも強引に俺に接する様になった王様に
なんやかんや言いながらもその存在が気になり始めていた
がさつで落ち着きがない人なのに
ちっともタイプじゃないのに
1度気になりだしたらもう止まらなかった


「よう、おはよう!遠藤、啓太。」
食堂で朝食を取っていた和希と啓太は、丹羽に声を掛けられた。
「おはようございます、王様。ご一緒に食べませんか?」
丹羽の持っていたトレーに気付いた啓太が丹羽に話しかけた。
「おっ、そうか。じゃ、邪魔するぜ。」
そう言って、和希の向かい側の席に座ると、丹羽は豪快に食べ始めた。
相変わらずの食欲に半分呆れて見ていた啓太は、チラッと隣の和希を見ると、ため息を1つ付いた。
明らかに不機嫌のオーラーを出している和希。
いくら嫌でも挨拶ぐらいはしようよ…と啓太は思った。
啓太は和希の肘を突付くと、不思議そうな顔で和希が啓太を見る。
啓太は小声で、
「和希、王様に挨拶くらいしなよ。」
「やだよ。なんで俺が?」
「やだとかの問題じゃないだろう?人として朝の挨拶くらいできなくてどうするんだよ。」
「…」
「和希!」
啓太に言われ、不本意ながら返事をする。
「解った。確かに啓太の言う通りだ。」
和希はそう言うと顔を上げ、目の前の丹羽に向かって、
「王様、おはようございます。」
そう一言だが、ぶっきらぼうに言った。
丹羽は驚いた顔をして、食べるのも止めて嬉しそうに和希を見た。
和希はもう丹羽を見てはいないが、丹羽は和希が声を掛けてくれたのが凄く嬉しかった。
丹羽は気付いていなかったが、和希の丹羽に対する態度は少しだけ変化していた。
今までと同じに避けている事には変わりなかったが、避け方がほんの少しだけ変わったのだ。
嫌でたまらない…から意識をしてしまった為に避けているような、そんな感じである。
そう言っても、好きだから避けているという訳ではなく、和希の心の中に入り込んで来た丹羽をまだ受け付ける余裕がない、丹羽という人物に対してどう自分が接すればいいのか解らない…という感じである。
和希自身もまだはっきりと気付いていないその想い。
周りの誰も気付いてはいない。
だから、今日も相変わらず丹羽が和希を追い掛け回している…と誰もがみていた。


「それよりもお前ら2人ともそれっぽっちしか食べないのか?それで昼までもつのか?」
和希と啓太のトレーを見ながら丹羽は言う。
啓太はチラッと和希と丹羽のトレーを見る。
2人共極端だよな…啓太はそう思った。
ホテルのブレックファーストのようなメニューをセレクトしている和希。
とんかつ定食と普通の朝定食をトレーにのせている丹羽。
なんか自分が普通に思えてくる。
いや実際は啓太のメニューが1番普通なのである。
「大丈夫ですよ。王様が食べ過ぎなんじゃないんですか?」
「啓太〜、今の言い方ヒデにそっくりだぜ?変な所を真似するなよ。」
「えっ?そうですか?」
嬉しそうに頬を赤くして答える啓太に、丹羽は呆れて言う。
「おい、啓太。何喜んでるんだよ。ヒデに似ているって言われて喜ぶなんてお前マゾかよ。」
啓太は頬を膨らませて、
「酷いです、王様!中嶋さんはそんなに酷い人じゃありません!第一王様が学生会の仕事をきちんとしてたら、何の問題もないんですよ。
なぁ、和希?」
いきなり自分に話が振られて、和希は焦るがすぐにいつもの笑顔で答える。
「ああ。啓太の言う通りだ。王様、少しは反省したらどうですか?」
丹羽は頭をガシガシ掻きながら、
「ったくよう、2人して俺の事責めるのかよ。朝からきついぜ。まぁお前らの言う通りだけどな。よしゃ!今日は真面目に仕事するからな。」
「本当ですか、王様?」
「おう!男に二言はないぜ。遠藤、今日は絶対に学生会室に来いよ!」
「はあ?」
怪訝そうな顔をする和希。
「何で俺が王様に命令されて学生会室に行かなくちゃいけないんですか?」
「俺が真面目に仕事をする所が見たいだろう?きっと、惚れ直すぜ。」
呆れた顔をする和希。
「惚れ直すって。俺は惚れてなんていませんけど?」
「照れるなって。遠藤の気持ちはよく解ってるからさ。」
「なっ…なに勝手に言ってるんですか!」
怒る和希なんて気にしないで、丹羽は笑うと、
「じゃ、俺はもう行くからな。お前らも遅刻しないように行くんだぞ。」
嬉しそうに笑いながら丹羽は食堂を出て行った。


4時間目が終わり、食堂に向かう和希と啓太。
啓太が和希に話し掛ける。
「ねぇ、和希。和希は王様の事嫌いなの?」
「はぁ?いきなり何言い出すんだ、啓太?」
呆れた顔で和希が聞く。
「うん…だってさぁ…和希ってば、王様に対する態度、もの凄く悪いよ?」
「そうか?」
「そうだよ。」
「別に嫌いって訳じゃないんだ。でも、王様ってしつこいんだよ。だから俺嫌なんだよ。」
ため息交じりに言う和希に、なる程ねと納得する啓太。
「確かにね。少ししつこい所があるかもね。でも、それって和希の事が好きだからじゃないのか?」
「だから、それが嫌なんだよ。いくら王様が俺の事を好きでも俺は王様の事をただの先輩にしか見れないんだ。ただの先輩としてなら王様の事は好きなんだけどなぁ。それなのに、“好きだから俺と付き合え!”ってしつこいんだよ。もううんざりだよ。」
そう言う和希の顔を見ながら、啓太は思った。
和希は本当にうっとうしいんだろうか?
うんざりしているんだろうか?
確かに和希は王様が来ると嫌がるけど、王様の姿が見えないと妙に落ち着かないんだよな。
何となく王様の姿を探しているっていうか。
和希にしては珍しく落ち着きがないんだよね。
そんな事を考えている啓太の顔を、和希は覗き込む。
「どうしたんだ、啓太?急に黙り込んで。」
「えっ?ううん。何でもない。それよりも和希って好きな人いないの?」
ドキッとする和希。
でも、不思議な事にその時すぐに中嶋の顔が浮かんでこなかった。
今までこんな事はなかったのに…
その事に和希自身も気付いていなかった。
「なっ…何だよ…どうして急にそんな話が出て来るんだよ。」
「だってさ。王様の事避けてるのは、誰か他に好きな人がいてその人に誤解されたくないと思ってるからかな、って思ったんだ。」
「そんな人いる訳ないだろう?もしいたら、親友である啓太に真っ先に報告するよ。」
「解った。変な事聞いてごめんね、和希。」
「いいさ、別に。だって啓太は俺の事心配して言ってくれたんだろう?嬉しいよ。」
啓太はその言葉を聞いて、微笑んだ。
「ありがとう、和希。和希にも早く素敵な恋人が見つかるといいね。」
「ああ、そうだな。」
和希は寂しそうに笑って答えた。


ふと気付いた事が1つあった
それは啓太と中嶋さんを見ても前程心が痛まなくなってきた事
まだ中嶋さんを諦める事はできないけど
それでも啓太と中嶋さんの事を祝福したいと
素直に思えるようになった事
こうして少しづつ
俺も成長していくんだろうか?






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