Beginnig 7


「すみません、中嶋さんいますか?」
3年生の教室の入り口で啓太は大声を出した。
本を読んでいた中嶋は本を閉じると啓太のいる入り口に視線を向けた。
「中嶋さん!大変なんです!!」
啓太は大声で中嶋に声をかけた。
学園MVPが学生会副会長の所に来たというだけで驚く3年生は一斉に中嶋を見た。
中嶋は徐に席を立つと、啓太の側に行くと、
「どうした?伊藤。そんなに慌てて。」
「中嶋さん、和希が…」
今にも泣きそうな啓太の顔に中嶋は、
「伊藤、学生会室に来い。話はそこで聞く。」
「は…はい。」
中嶋の後を啓太は急いでついていった。


学生会室に入ると中嶋はすぐに啓太に聞いた。
「伊藤、遠藤がどうしたんだ?」
「和希の奴、学校を退学するって…さっきメールがきて…俺どうしたらいいのか解らなくなっちゃって。とにかく中嶋さんに言わなくちゃって思ったんです。」
「なっ…退学?」
「はい。これなんです。」
啓太はそう言うと携帯のメール画面を開く。
そこには和希から啓太あてのメールが入っていた。
『啓太、約束守れなくてごめんな。急だけど、俺学園を辞める事にしたんだ。一緒に同じ学校へ通おうって約束、最後まで守れなくてごめん。でも、啓太には七条さんがいるから大丈夫だよな?俺は啓太の事をいつまでも親友だと思っている。学生ではなくなるけれども、これからもよろしくな。  遠藤和希』


メールを読んだ中嶋は呆然としていた。
何故だ?どうして急に?
中嶋は事の自体に完全に言葉を失っていた。
そんな中嶋の様子に気付かない啓太はオロオロとしていた。
「中嶋さん、俺どうしたらいいんですか?和希は理事長として忙しいって知ってますが、俺和希と一緒にいたいんです。」
和希と一緒にいたい…それは中嶋とて同じだった。
遠藤は完全に俺に惚れている…そう自負していたからだ。
それなのに、俺には何も言わずに伊藤にだけ別れのメールを入れて俺の前から黙って姿を消そうとするのか?
そんなのは許さない。
何の為に今まで待ったと思っているんだ。
遠藤の心の傷が癒されるのをずっと待っていたんだ。
今なら俺を躊躇わずに受け入れてくれる…そう思っていた。
なのに…


中嶋の絶対零度の気配にさすがの啓太も気付いた。
「あの…中嶋さん…?」
その声でハッと気付く中嶋。
「何だ、伊藤。」
「いえ、あの…和希の事なんですが…」
「ああ、その事か。心配するな。今から俺がサーバー棟に行って直接遠藤と話をしてくる。」
「えっ?和希とですか?でも、サーバー棟は一般生徒の立ち入りは禁止じゃないですか?」
「非常事態だ。仕方ないだろう?」
「はあ…」
唖然とする啓太に中嶋は無敵の笑いをする。
「俺に任せろ。遠藤の退学などなしにしてみせるさ。」
中嶋の笑顔に、相談する人物を間違えたのではないだろうかと思った啓太だった。






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