星に願いを 2

コツコツ…
天帝の執務室に向かう和希に啓太が声をかけた。
「あれ?和希、どうしたんだ、こんな所で。」
「この書類を天帝に届けに来たんだ。」
和希はそう言いながら書類が入った封を啓太に見せた。
啓太は天帝の秘書の石塚の手伝いをしている。
仕事は…
すぐに脱走する中嶋の片腕である丹羽を探す事がメインだ。
もちろん、忙しい石塚の手伝いはたくさんあるのだが、ちょっと抜けている啓太には時間が掛かってしまうので大抵石塚1人で間に合ってしまう。
それでも、石塚の補佐をさせているのは…
啓太が中嶋の側にいると中嶋の機嫌がいいからだ。
もちろん、愛しい啓太が側にいるのは嬉しい事なのだが、啓太と仲かいい和希が啓太に会いに来るので必然的に和希は中嶋とも会う事になる。
最近滅多に父親である自分に寄りつかない和希を中嶋は内心寂しく思っていた。

「それって、もしかしてこの間の決議案の書類?」
「ああ。一応俺なりにまとめてみたんだ。」
「相変わらずやる事が早いよね。多分1番最初じゃないのかな?」
「早ければいいってものじゃないだろう。内容が問題だからな。天帝に気に入ってもらうといいんだけれどもな。」
「大丈夫だよ。和希の案はよくできているって英明さんは褒めていたよ。」
「天帝が褒めてくれるのは嬉しいけど…身内びいきだって言われているからな。」
寂しそうに微笑みながら言う和希の後ろから声がかかった。
「そんなやっかみを気にするなんて和希らしくないな。」
「王様?」

啓太が声を上げる。
和希の後ろには丹羽が立っていた。
「王様、もうどこに行ってたんですか?英明さんが探していたんですよ。」
「悪いな。でも、啓太だってこんな所で寄り道をしているんだろう?」
「俺はちょっと和希と仕事の話をしていただけです。さあ、英明さんの所に帰りますよ。」
「分かったって。和希もヒデの所に行くんだろう。一緒に行こうぜ。」
「あっ…はい。」
和希の頭を撫でながら丹羽が言ったので、和希の頬はほんのりと赤くなっていた。
大好きな丹羽に触れてもらえて嬉しいが、その触れ方はまるで子供に接するようだった。
それが分かっているだけに和希の胸はキュッと痛む。

「それよりも、和希。どうしていつもヒデの事を『天帝』って呼ぶんだ?ヒデが壁を作られているようで嫌だって愚痴ってたぜ。」
「それは…けじめです。いくら父親だからって簡単に『お父様』とは呼べません。」
「相変わらず頭が固いな。」
困った風に笑う丹羽に和希は、
「仕方ないんです。実力がないくせに天帝の子だから優遇されているって陰口をたたかれているんですから。できるだけ刺激を与えないようにしないと。」
「和希も苦労するよね。ホントにやっかみが多いんだからさ。」
「啓太だけだよ、俺の気持ちを理解してくれるのは。だからさ、早く天帝と結婚しろよな。」
「か…和希…」

啓太の顔が真っ赤になる。
そんな啓太を和希は可愛いと思った。
「どうしてそう言う事を言うんだよ。」
「どうしてって。俺、楽しみにしてるんだけどな。」
「もう、和希ってば。いつも言ってるけど、俺は和希が結婚するまで英明さんとは結婚しないからね。」
力んで言う啓太に和希は、
「それじゃ、いつまでも結婚出来ないぞ。俺は当分結婚する気はないからな。」
「和希。英明さんも心配してるんだよ。誰か好きな人はいないの?」
「…いない…」

そう言った後、和希は隣に歩いている丹羽に声をかけた。
「王様は結婚しないんですか?」
「俺か?もう子育てもしたしなぁ。今更嫁さんもらうのもめんどくさいし、このままでいいかなと最近は思ってるんだ。」
「子育てって…それって俺の事ですか?」
「ああ。おしめまで替えてやったからな。俺の子と同じだろう?」
嬉しそうに和希を見つめる丹羽に複雑な顔で和希は丹羽を見ていた。
やっぱりこの恋は実らない…
そう思いながら…




BACK         NEXT