星に願いを 6

中庭のベンチに座って和希は告白するかどうか悩んでいた。
告白しなければ丹羽との関係はおそらく今までと同じだろう。
けれども、もし告白して拒否されたらどうなるのだろうか?
今ままでと同じに丹羽は自分に接っしてくれるのだろうか?
もしも疎まれたりしたらどうすればいい?
いや…
幼なじみで親友の天帝の子だからむげにはしないだろうが、態度に変化がでるのは明らかだ。
そんな事になったら…
和希はゾクッとする。
今のままでいい…
どうせ報われない恋ならば、綺麗なままで自分の心の奥にしまっていた方がいい。
確かに竜也の言う通り、告白すれば叶うかもしれない。
でも、無理して何もリスクをおかす事じゃない。

そう自分に言い聞かせていた時、
「おや、こんなところで和希君は何をしているのかな?」
「おじさん…」
和希はあまり会いたくない人物に声をかけられて嫌な思いをしていたが、それを顔に出さずににこやかに答えた。
「おじさんこそどうしてここに?」
「和希君に縁談があると聞いてね。水臭いじゃないか。どうして私に黙っていたんだい?」
「別に黙っていた訳じゃありません。俺も今日聞いたばかりなんです。」
和希は正直に答えた。
声を掛けてきた人物は久我沼啓二。
和希の母の義弟だ。
和希は久我沼が苦手だった。
いつも和希を舐めるような目で見る上に、天帝の後継者である和希を疎んじているのが分かっているからだった。
けれども、そんな相手でも和希にはとっては叔父だ。
「そうなのか?それでその縁談の相手と一緒になる予定なのかい?」
「さあ…まだ分かりません。」
「そうか。でも、その話は断った方がいいな。」
「どうしてですか?おじさんには関わりのない事だと思いますが。」
「関わりのない?まさか。大いに関わりはある。」
「?」

不思議そうに久我沼を見つめる和希の唇に久我沼の唇が触れた。
一瞬何が起こっているのか分からなかった和希だったが、口の中に久我沼の舌が入ってくると慌てて久我沼を押して久我沼から離れた。
「な…何をするんですか?」
「何を?これから和希君を私の物にしようと思ってね。」
「は?何を言ってるんですか?冗談なら止めて下さい。」
「冗談ではないよ。ここでは同性同士の結婚が認められている。私と結婚すれば和希君は天帝として色々と楽になるから。」
「結構です。」
「ウブなんだね、和希君は。何、怖い事なんかないから私に全てを預けて楽にしなさい。」
「嫌です。俺、もう戻りますから。」
そう言って去ろうとする和希の腕を久我沼は掴むと、
「手荒な真似はしたくなかったんだがね。言う事を聞かないのなら仕方がない。」
「な…何を…」
和希の口にハンカチが宛がわれる。
薬を染み込ませたハンカチを吸った和希はその場で意識を失ったのだった。




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