星に願いを 7
「まったく、どこにいるんだ?和希の奴は…」
丹羽がそう言いながら和希を捜していると、久我沼に支えられた和希が目に入った。
「どうして、和希が久我沼と?」
和希が久我沼を苦手としているのを丹羽は知っていた。
丹羽も中嶋も知っている事だが、久我沼は自分が次期天帝になりたいと色々と画策をしていた。
その久我沼にとって1番邪魔なのが和希の存在だった。
天帝の1人息子の和希さえいなければ自分が天帝になれると信じきっている久我沼は何かにつけて和希を失脚させようとしていた。
そんな久我沼に支えられている和希。
妙だと感じた丹羽は急いで久我沼の側に行った。
「おい、久我沼。こんな所で何をしているんだ?」
ビクッとする久我沼。
丹羽は久我沼に支えられている和希に声を掛けた。
「和希?どうしたんだ?」
何も答えない和希を丹羽は不審に思った。
慌てた久我沼は、
「和希君が貧血を起こしてね。今病院に連れて行こうと思ってたんだ。」
「和希が貧血?」
丹羽は和希の顔を覗いたが当然和希の意識はなかった。
「俺が病院に連れて行くから久我沼はもう仕事に戻っていいぜ。」
「いや、和希君は私が連れて行こう。私は和希君の叔父なのだから。」
久我沼はそう言ったが、丹羽は構わず和希を抱き上げた。
「俺が連れて行く。」
そう言うと丹羽は久我沼を無視して歩き出した。
完全に意識を失っている和希を丹羽は心配そうに見つめていた。
天帝の執務室で仕事をしていた中嶋は突然に丹羽が和希を抱えて戻って来たので驚いていた。
「和希?丹羽、和希はどうしたんだ?」
「久我沼に薬を嗅がされたみたいだ。取りあえず医者を呼んでくれないか?」
「分かった。」
すぐに呼ばれた医師によって、和希は軽い睡眠薬をかがされただけだと判明した。
後数時間もすれば目が覚めるだろうと言われて、中嶋も丹羽はホッとしていた。
ベットに横たわっている和希を見ながら中嶋は言った。
「まさか直接手をだすとは思わなかったな。油断した。」
「ああ、俺もだ。よっぽど切羽詰まっていたんだな。」
「だからといってやっていい事と悪い事がある。今回は丹羽のおかげで大事には至らなかったが、これからはもう少し気を付けないといけないな。」
「奴の悪事の証拠はだいぶ集まってきている。だが、今の状態ではまだ逮捕は無理だ。もう少し証拠固めをしないと無理だ。」
「分かっている。丹羽、今回の事があったからといって急ぐなよ。慎重にやってくれ。」
「任せとけって。」
丹羽は和希の髪をそっと撫でながら、
「しかし、久我沼の野郎、和希に何をするつもりだったんだ。一発殴っておけばよかったぜ。」
「おそらく久我沼の事だ。和希を自分の物にしようとしたんだろう。」
「自分の物?何だよ、それ?」
「言葉のままだ。和希を抱いてそれをネタにゆするつもりだったのだろう。」
「なっ…」
丹羽は激しい怒りを感じていた。
「冗談じゃねえ。俺の和希にそんな事をしてみろ。ただじゃおかないからな。」
怒りに震えている丹羽は、その怒りの正体には気付いていなかった。
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