星に願いを 9
「和希…」
丹羽の声に和希はハッとすると、
「おじさん、変な事は言わないで下さい。そんな事を言ったら王様に迷惑がかかります。」
「迷惑?丹羽君にとっては和希君の想いは迷惑なのかい?」
「決まってるじゃないですか。」
久我沼に誘導されているとは気が付かない和希は切なそうに答えていた。
とにかくこの恋心を丹羽には気付かれないようにしたい…
ただそれだけを和希は思っていた。
「そうか。なら構わない。」
「何が構わないんですか?」
不思議そうに聞き返す和希に久我沼は言った。
「私はね。和希君の事が好きなんだ。私と一緒になってくれないか?」
「えっ?」
和希は一瞬固まった。
久我沼の言葉を理解したくないと思ったからだ。
だが、久我沼は和希の気持ちなど関係なしに話始めた。
「実は和希君に縁談の話が進んだと聞いた時、初めて自分の気持ちに気が付いたんだ。私は和希君を甥として可愛いと思っていると勘違いしていたんだ。」
「あの…それって…」
「私は和希君を愛している。結婚して欲しい。」
「…」
目を大きく見開いて言葉を失う和希。
「私の想いを疑っているのかい?何ならここでキスをしようかい?」
キスと言う言葉で和希の意識は戻ってきた。
「け…結構です…それより…ごめんなさい。俺…おじさんの事はおじさんにしか思えません…」
「そうかな?これから一緒に愛を育んでいけばいいじゃないか。さあ、私のものになると言いなさい。」
和希の腰に手を回しながら久我沼は和希に顔を近づけようとしたその時、
「和希が嫌がってるのが分からないのかよ!」
そう言って丹羽は久我沼から和希を引き離した。
丹羽の腕の中にスッポリと収まる形になった和希は慌ててしまった。
「お…王様…離して下さい…」
だが、丹羽は和希の言葉には耳も貸さずに、
「俺の和希に手を出な。」
「丹羽君、君は何を言っているのか分かっているのかい?君のような身分で和希君に触れるだなんて汚らわしいにも程がある。さっさと和希君を離しなさい。」
「嫌だ。手を離したら和希に手を出すんだろう。そんなことは俺がさせない。」
「まったく。英明君にも困ったものだ。丹羽君を甘やかすからこういう事になるんだ。第一『俺の和希』とは何を考えて言っているのか分かっているのかい?まさかとは思うが丹羽君は和希君の事を愛しているのかい?」
「えっ…」
丹羽は動揺していた。
『俺の和希』…無意識に言っていたからだ。
和希の事は確かに好きだ。
だが、それは恋愛感情だとは思っていなかった。
けれども、和希が久我沼に告白されているのを見た瞬間、胸が苦しくなった。
和希は自分のものなのにと思ってしまったからだ。
今、久我沼に言われてはっきりと自分の気持ちに気付いてしまった丹羽だった。
丹羽は腕の中にいる和希をチラッと見た。
困ったように俯いている和希は耳まで紅くした。
そんな和希を見て、自分の気持ちを再確認させられた丹羽だった。
和希を自分のものにしたいと…
自分の手で幸せにしたいと…
意識した気持ちは急速に丹羽を動かし始めていた。
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