未来への扉5

 〜『未来への扉5』をお読みになられる方へのお願い事〜
  今回、強姦や血の流れる場面があります。
  これらが苦手な方はお読みにならない事をお勧めします。
  『5』を読まなくても『6』以降話が解る様になっています。
  『5』は和希がかなり辛い思いをする場面が多いので、お読
  みになられる方はご注意下さい。






「あれ?鍵が開いてる?」
和希は玄関のドアを開けようとして、鍵が開いてるのに気が付いた。
不思議に思いドアを開けると、玄関には男物の靴が2足置いてあった。
1足は父久我沼の物だが、もう1足は見知らぬ物。
きっと父が友人でも連れて来たのだろうと思った和希は挨拶をする為に居間へと向かう。
“コンコン”
「お父様?和希です。今戻りました。」
襖を叩き、廊下から声を掛ける。
「和希か?入って来い。」
久我沼の声を聞いて和希は襖を開けると、そこには久我沼ともう1人感じが悪そうな男性がいた。
その男性は和希が居間に入って来ると、ジロジロと和希を見詰めた。
嫌な感じはしたが父の友人であろう人に嫌な顔は出来ずに、
「いらっしゃいませ。」
と和希は言い、頭を下げる。
久我沼は男性に向かって楽しそうに言う。
「どうだ?言った通りだろう?」
「ああ…これ程とは思わなかった。」
男性はニヤリと笑いながら和希を食い入るように見る。
「これで本当に初めてなのか?」
「そうだ。」
「極上の一品と言っても良いくらいだ。いいだろう。お前の言った金額を支払おう。」
「ふっ…取引き成立だな。」
久我沼は男性から袋を受け取り中身を確認すると、立ち上がり入り口に座っている和希に声を掛ける。
「和希、俺は今から少し出かけて来る。客の相手を頼むぞ。」
「えっ?」
唖然とする和希を残して、居間から出て行く久我沼。
“ガチャ”
ドアの閉まる音が聞こえ、和希はハッとする。
「え…え〜と。」
和希は困ってしまった。
「あ…あの、今、お茶を入れてきますので、少々お待ち下さい。」
そう言って立ち上がった和希に男性は声を掛ける。
「そんな物はいらない。それよりもこっちに来い。」
“こっちに来い”…それはどう言う意味なんだろうと思いながら和希は男性の側に行く。
言われるがままに、男性の隣に座る和希。
男性は和希の顎に手を掛けると唇を合わせ、舌を滑り込ませ、無理矢理歯列をこじ開け、舌を絡ませてくる。
一瞬自分の身に何が起こっているのか解らず、されるがままだった和希は直ぐに今の状況に気付き、男性を突き飛ばした。
「な…何をするんですか?」
「何をするんだとはこちらの台詞だ。お前こそ人を突き飛ばすとはどういうつもりだ?」
「突然人にあんな事をするなんて、貴方こそどうかしています。いくら父の友人でも許せません。直ぐに帰って下さい。」
怒鳴る和希に男性は大声で笑い出す。
「何がそんなに可笑しいんですか?」
「お前…奴から何も聞いていないのか?俺は奴の友人でも何でもない。ただの客だ。」
「客?」
「ああ、奴からお前を買ったんだ。」
「えっ…買った…?」
「寝るのは初めてだからと偉く高い金額を吹っ掛けられたがな。まあ、こんな美少年ならいいと思って払ったがな。」
和希は声が出せなかった。
「これで解ったか?俺は奴ときちんと取引きをして、代金も支払った。だから貴様もきちんと役目を果たせ!」
そう言うと和希をその場に押し倒し、乱暴に制服を脱がせていく。
露わになる和希の白い肌。
その白い肌には久我沼の暴力によって付けられた痣が無数にあったが、男性はそんな物は気にしないかの様に和希の白い肌に舌を這わせていく。
和希の開いた目には、もう何も映ってなかった。
まさか自分が売られるなんて考えてみた事もなかった。
そこまで、父に嫌われていたのかと思うと涙すら出なかった。
どうして?…和希は思った。
どうして自分はここまで父に疎まれるんだろう?
小さい頃から父には抱かれた事も、可愛がられた事もなかった。
いつも自分を見ない父。
和希の記憶に残る父はいつも横を向いていた。
母は…そんな父の事をこう言っていた。
『本当は優しい人なのよ。』
『今は辛い事があって、自分を見失っているだけ。』
けれど、和希はそう思えなかった。
でも、大好きな母の口癖だから信じようとしていた。
しかし、今…和希の中で何かが音をたてて砕けていった。


事が済んだ男性は立ち上がると、ズボンのファスナーを閉めながら和希に向かって、
「初めてにしては良かったな。お前には男性を喜ばせる素質があるようだな。気に入ったよ。また買ってやる。」
そう言い残して家から出て行った。
1人残った和希は暫くそのまま動こうとはしなかった。
どれくらい時間が経ったのだろうか。
和希は痛む身体を起こした。
身体中に残る男性が付けた赤い跡。
そして、お腹や足に付いている白い飛沫。
足に流れる赤い血。
初めての行為に愛や優しさなど一欠片も無く、だた男性の欲望の為に何度も何度も貫かれた。
和希は側に脱ぎ捨てられた制服のシャツに手を伸ばすと、袖だけを通し、フラッと立ち上がり仏壇の母の写真に触れた。
「お母様、俺もう疲れちゃった…」
そう呟いた。
「俺頑張ったんだよ…お父様に好かれ様と精一杯頑張ったんだよ…」
和希の目から一粒の涙が頬を伝わった。
「でも…もう頑張れない…お母様約束を守れなくてごめんなさい…」
一度流れた涙は次々と溢れてくる。
「もう…いいでしょ?頑張らなくても…お母様の側に行っても怒らないよね…昔みたいに頭を撫でて“よく頑張ったわね”って言ってくれるよね…」
和希は母の写真を持つと、台所に行き包丁を手に取ると、左の手首に当て一気にザクッと切り付けた。
溢れ出す血は和希の左手を通って、床に落ちる。
和希はズルズルと床に座り込むと、写真の母に向かって微笑んだ。
「お母様…今から…会いに…行きます…ね…」
そう言うと意識を手放した。
左手首から流れる血は止まる事無く流れていたが、和希は幸せそうに微笑んでいた。




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