執事の君といつまでも… 2


「いってらっしゃいませ。」
「行ってくる。」
並んで見送ってくれる使用人の皆に英明はそう言ってから玄関を出た。
外にはいつも通り、車寄せをして中嶋を待っている和希がいる。
朝見た時と同じダークスーツに身を包んでいる。
朝日を浴びて輝いている茶色の髪、白い肌、綺麗だけれども、可愛らしいその顔。
中嶋は今朝も満足そうに和希を眺めていた。
和希は中嶋の姿に気が付くと、ポケットから白い手袋を取り出し、その美しい手にはめると車の後部席のドアを開いて中嶋を車に乗せた。

もうすぐ学校に着くという頃、和希は中嶋に声を掛けた。
「英明さま、今日のお帰りはいつも通りでよろしいでしょうか?」
「そうだな。今日も生徒会があるだろうから。」
「それではいつもの時間にお待ちしております。もしも、変更がございましたら、メールでも電話でも構いませんのでご連絡下さい。」
「分かった。」
いつもと同じ会話。
毎朝、車の中で繰り返される会話だ。
和希は中嶋に対して必要以上の事は喋らない。
学校に着くまでの間、偶に中嶋から話し掛ける事はあっても和希から話し掛ける事は滅多にない。
中嶋も車の中では生徒会の書類を整理しているので忙しいという事もあるけれども。

学校に着き、和希が車から降りると生徒達の囁き声がする。
中嶋が通う高校は男子校だ。
しかも、比較的裕福な家庭の子息が通う私立校だった。
生徒達のざわめきを気にも留めないで和希は後部席のドアを開く。
中嶋は外に出ると、囁いている生徒達の声が聞こえてきた。
「和希執事が朝から拝めるなんて、俺今日はついてるかも。」
「今日のスーツもバッチリきまっていてなんて綺麗なんだ。」
美しい和希を気に入っている彼らは朝夕、和希の姿を見ると嬉しそうにする。
その声はおそらく和希にも聞こえているのに、和希は顔色1つ変えようとしない。
まるで聞こえないように振る舞っている。
そんな和希を見て、中嶋は安堵の息をつく。
誰よりも好きでたまらない和希を他の奴らにやるわけにはいかない。
和希を幸せにするのは自分なのだからとずっと昔から中嶋は決めていたのだから…




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