執事の君といつまでも… 5

中嶋家の庭は日本庭園でいつも綺麗に手入れがされていた。
四季折々の花が咲き乱れる庭は、今の季節は菜の花・パンジーなどの草花の他に桜等の木々の花も咲いている。
その日…
心地好い春風に誘われて中嶋は1人庭に出て来ていた。
中嶋はまだ幼かったが忙しい両親に気を使い、両親に甘える事なくいつも1人でいた。
1人と言っても中嶋家は裕福なので、執事やメイド、それに中嶋の教育係もいたので誰かしら中嶋の側に人はいた。
そのせいか、中嶋は行動も言動も年齢よりも大人びていた。
1人で庭を歩いていた中嶋は、父親の声に気が付いた。
こんな時間に家にいるなど珍しい。
そう思いながら何気無く声をした方を振り向いた中嶋は、そのまま動けなくなってしまった。
そこにいたのは中嶋の父親と執事の河本、そして学ランを着た綺麗な少年だった。
初めて見るその学ラン姿の少年は誰なのだろうかと中嶋は思っていた。
ジッと見つめるその視線に気が付いた学ラン姿の少年は中嶋に気が付くと、ニッコリと笑った。
その笑顔に中嶋はドキッとした。
こんな感情は初めてだった。
どうしようと途惑っていると、中嶋の父が中嶋に気が付いた。

「英明?どうしたんだ、こんな所にいて。」
「今日は天気がいいので散歩をしていたのです。」
「そうか。ああ、ちょうどいい。お前にも紹介しておこう。」
そう言って学ラン姿の少年を中嶋に紹介した。
「河本の親戚の遠藤和希君だ。明日からベルリバティー学園に特待生として入学するそうだ。自宅から通う事はできないので河本の所で暮らすので挨拶に来たんだ。学校が終わった後や休日は執事見習いとしてここで働くので、英明も覚えておきなさい。」
「遠藤和希です。英明様、どうぞよろしくお願いします。」
和希はそう言うと頭を下げた。
「気に入った。」
中嶋はそう言った後、父親に向かって、
「父上。俺はこの者が気に入りました。俺の専属の執事にして下さい。お願いします。」
頭を下げてお願いをしたのだった。

今まで、頼み事などした事もない中嶋からの頼み事に中嶋の父は、
「珍しいな。お前が頼み事をするなど。そんなに気に入ったのなら、遠藤を専属の執事にしよう。」
「待って下さい、旦那様。和希はまだ執事の事を何も知りません。英明様の専属の執事は務まりません。」
慌てて言う河本に中嶋の父は暫く考えた後、
「分かった。それでは遠藤が執事になるまでは英明の遊び相手になってもらおう。それなら構わないだろう、河本。」
河本は少しだけ困った顔をしたが、
「分かりました。しかし、和希はまだここの事を何も知りません。英明様に粗相がないように教育をしますので、遊び相手は1週間ほど待って頂けますか?」
「よかろう。英明もそれでいいな。」
「はい。」
「では、そういう事で頼むぞ、河本。遠藤も一刻も早く英明の遊び相手になれるよう、しっかりと学ぶように。」
「はい。」
いきなりの事で途惑ってはいるが、和希はしっかりと頷いた。
そして中嶋の側に行くと、膝を折り目線を中嶋に合わせた。
「英明様。この度は私をご用命して下さり、ありがとうございます。1日でも早く英明様の遊び相手に相応しくなるよう学んで来ますので少しの間お待ちになって下さい。」
「分かった。待っている。早く来いよ。」
中嶋は嬉しそうに微笑んで手を差し出し、その手を和希はそっと握り返したのだった。




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