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和希はサーバー棟へ向かっていた。
今のこの気持ちをどう整理すれば良いのか分からなかった。
王様の事は好きだけれど、この気持ちを打ち明けるつもりはなかった。
ただの一年の遠藤和希ならためらいもなく打ち明けていたと思う。
けれど、本当の自分は鈴菱和希なのである。まさか理事長が自校の生徒に手を出すなんて、そんな事はできない。
だから…遠くから見ているだけのつもりだった。
でも、啓太が中嶋さんと付き合うようになって一緒に学生会室に行くようになってすぐ側に王様がいる環境に慣れてしまうと…自分は欲張りなんだと気付いた。
今のこの状態を手放したくないと思うようになった。
少しでも多く王様と一緒にいたかった。
なのに…どうして王様は俺にあんな事をしたんだろう…
王様も俺の事が好きなのかな…?
まさかな…
「一発殴らせろ!」
と、怒鳴った王様が俺の事を許す訳ないじゃないか。
分からない…
どうして王様があんな事をしたかどうかも、これから自分はどう王様に関わっていけばいいのか。
和希は何も分からなくなってしまっていた。


一方学生会室を飛び出した王様もサーバー棟へ向かって走っていた。
ここ数日ずっと遠藤の事が気になっていた。
何故なんだと思う。
自分が理事長だと言うことを俺に黙っていた遠藤。
俺がどんなにか理事長に会いたがっていたかを知っていたのに何も言わなかった遠藤。
ヒデからその話を聞いた時は、はらわたが煮えくりかえるぐらいにムカついた。
郁ちゃん、七条、ヒデ、それに啓太までもが知っていた遠藤の秘密。
自分だけが知らなかったという事実。
一発殴るぐらいじゃ気は収まらないとは思ったが、殴らずにはいられなかった。
いつ、そのチャンスが訪れるかと遠藤を見ているうちに気持ちが少しずつ変化していった。
遠藤は、いつも啓太を見ていた。
とても柔らかで暖かい視線で。
ヒデと啓太が一緒にいてもヤキモチをやくわけでもなかった。
そんなに啓太の事が好きなのかと聞いたあの日、
「好きですよ。でも、恋愛感情はありませんよ。俺は啓太の親友ですから。」
と、サラッと遠藤は言った。
その時はなぜだか分からなかったが、すごく嬉しかった。
遠藤の啓太に向けられる笑顔は、けして俺には向けられる事は無かった。
それが何故か悔しくて…でも、その理由は良くわからなくって…
そうやって遠藤を見ているうちに、あの場面に出会った。
学生会室のドアを開けた瞬間俺の方へバランスを崩して倒れかかってきた遠藤。
遠藤が俺の躰に触れた時、何が起こったのか分からなかった。
気が付いたら、遠藤を抱きしめてその髪にキスをしてたんだから。
いつからかは分からないが、俺は遠藤に恋してたんだとやっと気付いた。
気付いたなら、後は実行に移すのみ!!!
絶対に遠藤を俺の物にしてやる!!!


そう考えながら走っていた丹羽は、サーバー棟の手前で遠藤を見つけ叫んだ。
「遠藤!」




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