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バレンタインと誕生日と…7

和希が意識を手放すと同時に、中嶋は和希を攻めるのをやめた。
会議室の床の上に身に何も纏っていない状態で倒れている和希を見て、中嶋は顔を歪ませた。
どうしてこうなってしまったのだろうか?
誰よりも大切にしようと想っている相手を、ここまで酷く扱ってしまった。
『やだっ』『痛い』『許して』…
何度も和希の口から零れてた言葉。
なのに、それを無視して手酷く抱いてしまった。
いや…
これは抱いたうちには入らないかもしれない。
殆どレイプのようなものだったからだ。
ほぐしもしないで入れた為に裂けて血が流れていたのに、それを無視して行為をすすめた。
涙で濡れた和希の顔を今の中嶋は見る事ができなかった。

会議室を出て昇降口に向かおうとしていた中嶋は西園寺に会った。
「中嶋、今頃まで仕事をしていたのか?」
「ああ。西園寺こそどうしてここにいるんだ。丹羽ならとっくに帰ったぞ。」
「丹羽が帰ろうが私には私のやる事がある。何でも丹羽に合わせるわけにはいかない。」
「そうか。」
「そういえば、遠藤には世話になったな。」
中嶋の眉間に皺が寄った。
今、1番聞きたくない名前だったからだ。
中嶋の様子に西園寺は気が付いたが、わざと気づかない振りをして話を進めた。
「先程出張帰りの遠藤に会ったが、お前はもう会ったのか?」
「ああ。」
「なら、もうチョコレートは受け取ったんだな。かなり不安がっていたから気になっていたんだ。」
「不安?」
「散々悩んで選んだチョコレートをお前が気に入るかどうか悩んでいたので、アドバイスをしてやったんだ。チョコレートと一緒に最高の笑顔をつけてやれば中嶋はきっと喜ぶとな。そう言ったら、凄く嬉しそうな顔をして『頑張ります』と言っていた。お前を想うとあんな綺麗な笑顔ができるんだと内心驚いた。中嶋、遠藤は背負うものが多くて自分の事はいつも後回しにしてしまう。だが、どんなに忙しくてもお前の事をいつも1番に考えている遠藤の気持ちを大切にしてやって欲しい。」
「随分と分かり切った言い方をするんだな。」
「中嶋よりも付き合いが長いからな。だから気になるんだ。中嶋に遠慮している遠藤の事が。」
「俺に遠慮をしている?」
「そうだ。今回のチョコレートの件もだ。私の気に入ったメーカーのチョコレートを取り寄せてしまった為にお前に誤解されないかどうか気にしていた。あそこのチョコレートは国内では販売されていない。手に入れるには通販しかないのだが、送料が高くついてしまう。丹羽の予算ではチョコレートと送料両方を出す事ができなかったんだ。だから、遠藤は予定していたメーカーのものを辞め、丹羽と同じメーカーのチョコレートにしたんだ。だが、丹羽が求めたチョコレートと同じメーカーのものだとお前が知ったらついでに求めたと誤解されないかどうかとな。だが、それも気苦労だったようだな。」
「…」

中嶋は自分の行為を恥じていた。
七条の言葉を鵜呑みにして和希を疑ってしまったのだ。
落ち着いて考えれば和希がそんな事をするはずがない。
なのに、あの時は頭に血が上ってしまって七条の言葉を疑いもしなかった。
「西園寺。俺は用を思い出した。これで失礼する。」
中嶋はそういうと会議室に向かって歩き出した。
そんな中嶋を見て、西園寺は溜息を付く。
「まったく…臣のおかげで迷惑を被ったな。だが、中嶋も遠藤の事になると周りが見えなくなるとはな。」
出張帰りの和希に会った西園寺と七条。
西園寺のアドバイスを聞いた後の七条の様子がおかしいのに気が付いた西園寺は七条に問いただしたのだった。
七条の話はいつもと変わりなかったが1つ気になった事があった。
それは七条も気にしていたのだが、中嶋の態度が少しおかしかった事だ。
まさかとは思ったが今の中嶋との会話で確信した。
中嶋が和希からのチョコレートを受け取らなかったという事に。
だが、もう大丈夫だろう。
きっと和希も幸せなバレンタインを送る事ができるだろうと。
「丹羽に協力してくれたお礼だ。遠藤、中嶋と思い出に残るバレンタインの夜を過ごすがいい。」
西園寺はそう呟くと、丹羽が待つ寮に向かって歩き出した。

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